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「源氏物語 紫の結び」荻原規子

2018年07月14日 21時33分11秒 | 読書(古典)

「源氏物語 紫の結び」荻原規子

先週は、購入してずっと積んだままにしていた「紫の結び」を読んでいた。
荻原規子版「源氏物語」である。
とても分かりやすい、シンプルで美しい日本語を駆使して、「源氏物語」が再現される。
また、読みやすいように工夫もされている。
源氏物語のメインキャストは光源氏と紫の上。
この二人を中心に物語が流れるようにしてある。
そして、二人の出会いから晩年までが描かれる。
すっきりスピーディに、それでいて原作を損なわない、という至難の業だ。
2巻の終わりあたりから3巻半ばが「若菜」になり、核心となる。
最終章は「雲隠」。

P89
大堰川ほとりの屋敷は、見映えもよく、住み慣れた海辺にも似たところがあるので、転居した違和感は少しでした。(現在の大堰川は南丹市八木地区から亀岡にかけてを指す。本作品の文章を読むと、嵯峨野、つまり嵐山の渡月橋あたりを意味しているようだ。明石の君が相続した屋敷が、この川のほとりにある、と。源氏の君の御堂も大覚寺の南にある。ちなみに、寂聴先生の寂庵は、化野念仏寺ほどじゃないけど、かなり嵯峨野でも奥にある。また、嵯峨野は源氏物語ゆかりの野宮神社もあり「賢木」の舞台。関係ないけど、「美しき言つくしてよ」で、真幸と有子がデートしたのも、この辺りではないかと推測される)

P157
斎院も今では仏道に励み、一心不乱に修行をしているようだ。
(斎院がなぜ仏道に、と不思議に思うかもしれない。でも、この朝顔斎院も出家している。神仏習合で違和感がないのでしょう)

【著者あとがき】
P333
紫の上は、女三の宮を妻に迎えた時点で、たいそう静かに源氏の君を見限ります。揺るぎない愛情という幻影を捨て去り、以後二度と考え直しません。そのことが、彼女の死期を早める要因になります。(この洞察がすばらしい。紫の上は、あれだけ源氏の君に愛され長い年月を共にしながら、子どもを産まずに亡くなる。このあたりが、佐野洋子さんにより、『源氏はあまたの女に情けをかけながら1人として幸せにしていない』と言われる所以だ)

P334
この物語は、読まない人から思われているほど、理想の美男子にうっとりするための読み物ではありません。もてはやされる人物のだめな部分が一貫していることろに、本当の凄味があるのです。

PS
登場人物たちは、名前の代わりに役職で呼ばれる。
役職が変わるたびに、呼び名も変わり、覚えなおさないといけない。
「源氏物語」のハードルのひとつ、と思う。
本作品では、分かりやすいよう工夫が凝らされているが、
それでも「誰だったっけ」となる。(歳はとりたくないものだ)

【ネット上の紹介】
帝に特別に愛された薄幸の女性に端を発して物語は進んでいきます。死んだ母に似ているという父の新しい妃に対する思慕。山里で源氏はその妃の面影を持つ少女を垣間見ます。紫の上との出会いでした。勾玉シリーズ、RDGシリーズの荻原規子によるスピード感あふれる新訳。紫の上を中心に再構築した、みずみずしい源氏物語。

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