青山文平氏の短編集。
次の6編が収録されている。
三筋界隈
半席
春山入り
乳房
約定
夏の日
本作品は、単行本では「約定」と言うタイトルだった。
文庫化にあたって「春山入り」に変更したそうだ。
内容は全く同じ。
タイトルだけが変わった。
読んで分かった。
短編集のタイトルは、その作品集の顔であり代表だ。
「約定」より「春山入り」の方が断然良い。
完成度も内容もずっと上だ。
「半席」も収録されているが、これが後の連作短編集「半席」の第1作目。
いろいろ楽しめる内容だ。
【著者の言葉】
P281
一般的には、短篇はスケッチであり、長編の片手間に肩の力を抜いて描かれるもの、というような見方があるかもしれませんが、私は長篇となんら変わらぬ構えで小説世界の構築に取り組みます。その証左がまずは創作の期間で、私は一篇の短篇の制作に少なくとも三ヶ月をかけます。素材の探索にひと月、構想にひと月、そして執筆にひと月です。
【ネット上の紹介】
藩命により友を斬るための刀を探す武士の胸中を描く「春山入り」。小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱した行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た刀の交換と、劇的な結末を描く「三筋界隈」。城内の苛めで病んだ若侍が初めて人を斬る「夏の日」。他に、「半席」「約定」「乳房」等、踏み止まるしかないその場処でもがき続ける者たちの姿と人生の岐路を刻む本格時代小説の名品。