「百年の女」酒井順子
1916年創刊の『婦人公論』の主要記事やトピックから世相を読み解いていく企画。
日本女性と社会の変遷を丹念に追った近現代史。
興味深く面白い。
現代あたりまえ、と思ってることが、裏に歴史あり、と分かる。
P72
現在、フランス以外のヨーロッパのラテン系国家や韓国、日本なの、低出生率に悩む国は、女性の参政権において後れをとった国であり、女性の参政権を早くから認めた国は現在の出生率も高いという点は、注目に値しましょう。
小林一三氏のコメント
P119
見合いで結婚したならば、「どの道、女は男の運命に黙従するより外に途はない」のだからして、「尊敬されよう」などとは夢にも思うものではない、と。(小林一三氏といえば阪急電鉄創業者・・・もっと開明的な方、と思っていた)
P158
新憲法施行後にあらわれた新しい離婚理由が「性格の不一致」であるという話も、登場しました。(戦前は、それって「贅沢きわまりない離婚原因」だった)
P181
昭和29年には、自由党憲法調査会長である岸信介が、「憲法第24条を改正し、全体として昔の家族制度を復活したい」という意思を持つ、との報道がなされていました。(岸信介は安倍晋三のお祖父さん。「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し・・・」も気に入らなかったらしい)
P200
旧来の日本家屋は、今となっては信じられないことですが、外から鍵をかけることができなかったのです。常に誰かが留守番をしていなければならず、そのせいで主婦は家に縛り付けられました。(落語を聞いていると、中からつっかえ棒はしてたようだ)
P273
「専業主婦」は、この頃までは「へんな言葉」だったようなのです。それというのも、従来は「主婦」といえば専業が当たり前で、わざわざ「専業」をつける必要がなかったのでしょう。携帯電話が登場した後、それまでは単なる「電話」と言われていたものが「固定電話」とか「イエデン」などと言われるようになった(後略)
P291
父親はずっと仕事、母親はカルチャースクールかパート、そして子供は学校から塾へ、戻ってくれば二階の自室に籠もってウォークマンかファミコン。
・・・・・・ということで、家族が顔を合わせる時間がなく、「家庭に緊張がなく、家族の団らんも会話もない」からこそ、ホームドラマが成立しない。
P331
平成6年に老いや死について記された『大往生』(永六輔)がベストセラーとなりましたが、平成7年3月号には、「大往生は男の発想、女は介護で立ち往生」(樋口恵子)という記事が。
【ネット上の紹介】
〈女人全開〉の歩みに驚愕、呆然のち爽快――面白く、ためになる異色の近現代史。大正の「非モテ」、女タイピストの犯罪者集団、ウーマン・リブとセックス、専業主婦第二職業論……トンデモ事件から時代を揺るがせた論争まで。人気エッセイストが、『婦人公論』(1916年創刊)の主要記事やトピックを取り上げながら、日本女性と社会の変遷を丹念に追った、トリビア満載の労作。祖母たち、母たちの100年分の知恵がここに!
大正の爛熟―大正5年~15年(創刊前夜
女の心得、説くのは男? ほか)
昭和娘の気質―昭和元年~21年(変わりゆく女性美の基準
令嬢から荷馬車輓の娘まで ほか)
戦後の希望―昭和22年~39年(憲法は宝の持ち腐れ?
冷戦と浮かれた若者 ほか)
リブの挑戦―昭和40年~63年(ゆらいできた「幸福」の形
青春の只中を生きる日本 ほか)
平成の分かれ道―平成元年~28年(「女の時代バブル」が到来
女の人生、ロールモデルは? ほか)