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「極楽征夷大将軍」垣根涼介

2023年08月23日 01時14分47秒 | 読書(歴史/時代)


「極楽征夷大将軍」垣根涼介

垣根涼介さんの新刊。
2023年 第169回 直木賞受賞。
以前は、現代小説を書いていたが、このところ歴史小説にシフトされている。
本作品は、室町幕府初代将軍・足利尊氏を中心とした群像劇。
鎌倉幕府滅亡、室町幕府の誕生&南北朝時代が描かれている。
2段組549頁で読み応えたっぷり。

P20
頼朝の寡婦、政子は、腹を痛めて産んだ自らの長子と孫を殺されることを黙認した。肉親の情より、得宗家の権益を守ることを優先した。

P53
今の鎌倉府に君臨する北条家は、その源氏の末端ですらない。鎌倉府が出来た頃には平氏の木っ端だった家柄が、辛うじて頼朝の係累ということだけで成り上がってきたにすぎない。

P193
初代征夷大将軍である源頼朝が、武士の土地所有を正式に守る法制度を確立した。以来、御家人たちの権益は、常に鎌倉府の許で保持されてきた。逆に言えば、権益を幕府から守られてきた武士たちを、御家人という。

P199
国司とは、朝廷の地方長官のことで、行政権、租税徴収権を含めて、その一国の支配を委任された官職のことである。対して守護職とは、幕府が任じた地方管の名残であり、該当国の治安、武士の統率という警察権を持つ。

P328
光厳上皇からの院宣を賜るべく、持明院統と近しい公卿、日野資名に協力を仰ぐ使者を送った。(中略)
ちなみにこの縁が契機となり、室町幕府の基盤が安定した後年、日野家は歴代将軍家に次々と正妻を送り込み、公卿としての権勢を極めることになる。(8代将軍義政の妻・日野富子が有名――応仁の乱を背景に巨万の富を築いた。でも、夫が入れ込んでいる銀閣寺には金を出さず悪妻の評を高めた)

P357
(楠木)正成は北条家の御内人であった。源氏はおろか平氏の陪臣か陪々臣で、詰まるところは素性定かならぬ即席の朝臣に過ぎない。(でも、軍略の天才で、戦をさせれば連戦連勝。そのカリスマ性により神となり、神戸市湊川神社に祀られている)

【感想】
足利尊氏が毛沢東で、弟・直義(ただよし)が鄧小平。
毛沢東と鄧小平は仲が悪かったが、
足利兄弟は仲がよかった。
尊氏は戦上手だけれど、実務能力がペケだった。
弟はその逆。
だから、最強タッグとなり室町幕府を開くことが出来た。

【参考リンク】

「信長の原理」垣根涼介

「室町無頼」垣根涼介

「光秀の定理」垣根涼介

【ネット上の紹介】
やる気なし使命感なし執着なしなぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。

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