【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「式の前日」穂積

2012年12月07日 21時33分23秒 | 読書(マンガ/アニメ)

「式の前日」穂積

評判の高い作品を読んだ。
おもしろかった。
短編集で6編収録。
日常と不思議の移行が巧い。
すべて「別れ」がテーマで、この統一感もいい。

(ここから辛口になるので、読みたくない方はストップ)
ただ、世間が絶賛するほどレベルが高いか、というと疑問。
新人の処女作としては、よく出来ている。
でも、私は吉田秋生さんのデビュー当時を知ってるから。
(遜色がない、という訳にはいかない)
「あずさ2号で再会」は、構成と展開が巧いけど、
トリックは、樹村みのりさんの「菜の花畑のこちら側③」のバリエーション。
・・・ということで、期待大だった分、辛口となった。
技術も個性もある期待の新人、ということでフォローして終了。
100人いたら、99人まで絶賛すると思う。

もっとも美しい小説

2012年12月04日 21時47分09秒 | 読書(ベスト)

オール讀物 2012年11月号

特集「美の快楽」
大アンケート・・・作家28人が選ぶ「もっとも美しい小説」

あさのあつこ・・・「枯木灘」中上健次
有栖川有栖・・・「盲目物語」谷崎潤一郎
井上荒野・・・「タイガーズ・ワイフ」テア・オブレヒト
宇江佐真理・・・「氷の時計」田中小実昌
荻原浩・・・「夜長姫と耳男」坂口安吾
角田光代・・・「第七官界彷徨」尾崎翠
北村薫・・・「ヴェラ」リラダン
窪美澄・・・「銀の匙」中勘助
桜庭一樹・・・「ドリアン・グレイの肖像」オスカー・ワイルド
佐藤賢一・・・「老人と海」ヘミングウェイ
佐藤多佳子・・・「京に着ける夕」夏目漱石
朱川湊人・・・「集会」レイ・ブラッドベリ
大道珠貴・・・「山の音」川端康成
田口ランディ・・・「万華鏡」レイ・ブラッドベリ
俵万智・・・「岸辺の旅」湯本香樹実
辻村深月・・・「芋虫」江戸川乱歩
中島京子・・・「美しき町」佐藤春夫
貫井徳郎・・・「一瞬の光のなかで」ロバート・ゴダード
林真理子・・・「春の雪」三島由紀夫
樋口毅宏・・・「いちげんさん」デビット・ゾペティ
姫野カオルコ・・・「平家物語」
平岩弓枝・・・長谷川伸の戯曲
藤田宜永・・・「山居記」立原正秋
真山仁・・・「死者の名を読み上げよ」イアン・ランキン
皆川博子・・・「詞華美術館」塚本邦雄
柳広司・・・「名人伝」中島敦
山本兼一・・・「片腕」川端康成
山本文緒・・・「リア家の人々」橋本治

「RDG レッドデータガール」(6)荻原規子

2012年12月03日 23時00分27秒 | 読書(小説/日本)

「RDG レッドデータガール~星降る夜に願うこと」(6)荻原規子

シリーズ最終巻。
一部書店では、29日に店頭に並ぶ、と聞いていた。
28日の昼休み、明日に備えて紀伊國屋書店・在庫検索をかけた。
するとどうだろう・・・「在庫あり」、と!
ソッコー紀伊國屋にTEL、「在庫あるんですか?」、と私。
「本日入荷しました」、と店員さん。
「レジに取り置き下さい」、と私。
その日は残業を早めに切り上げて、紀伊國屋に直行。
もちろん、その晩は一気読み。
そして、週末はゆっくり再読。
現在、やっと落ち着いた。

読んでいない方のために紹介すると、内容はほとんど学園もの。
日本を代表するファンタジー、と思う。
ファンタジーの難しさは表現力にある。
現実離れしたシーンのリアリズム。
そこに至る、登場人物の心理的な盛り上げ。
巧みな文章力が必要とされる。
その点、荻原規子作品は、満足度120%の仕上がり。
(比較にならないけど、「ハリーポッター」より、ずっとおもしろい)

本巻では、(登場しないけど)重要人物が示唆された。
深行君の母親・香織、である。
もし、第2部が上梓されるならキーパーソン、でしょう。
第2部、だなんて、気が早すぎ?
でも、この終わり方は、つい第2部を期待してしまう。
なぜなら、まだ主要人物たちが高校1年だから。
せめて卒業まで、あと2年間を描いて欲しい、と願う。
(今は、白紙状態でしょうけど)

いくつか文章を紹介する。
P261
「陰陽道には、則と理がある。根本的にはカオスをなすこの世のものごとに、則や理にかなった縛りを与える思想だ。だから、魔を封じるための術が基本なんだ。鈴原さんの力はそうじゃない、何でもかんでも増殖させるんだ。源泉なんだ」

P323
「泉水子と姫神が別人かどうかは、ものの見方によるだろう。姫神が過去へさかのぼった結果、もっとも念入りにやりなおしたのは、このわたしの人生だったはずだ。自分を産む者のあり方を一番どうにかしたかったのは、その立場にあれば当然だ。そのせいで、私の特徴がいろいろ染みついて、その後の性質には、最初の人格より私の人格のほうが色濃く出るのかもしれない。まあ、どう考えてもいいよ」

P335
「岩、つまりは鉱物。生命体から一番遠く、硬化して動かないと思うものでも、地球の芯にあってはちがうだろう。地上の生命よりはるかに高い波動をもっている。これが地球の本当の命であって、有機生命体はその小さなまねごとかもしれない。そういうものが地表に出てきて、降りそそぐ太陽に遠い自分たちの源を知る。それは歓びだ。神々とは、歓びが本質だよ。姫神もたぶんそういうものだ」

さて、今回のサブタイトルは「星降る夜に願うこと」・・・この意味は最後のシーンでわかる。

【蛇足】
「がんばれ!!タブチくん」というマンガがあった。
あり得ないことを「タブラン」と言った。
タブチくんのランニングホームラン、の略である。
荻原規子作品の「タブラン」は「濡れ場」、でしょう。
でも、もし「それ」に相当するシーンがあるとすれば、本作品の最終シーンではないか、と思う。

【ネット上の紹介】
泉水子は“戦国学園祭”で能力を顕現させた。影の生徒会長・村上穂高は、世界遺産候補となる学園トップを泉水子と判定するが、陰陽師を代表する高柳は、異議をとなえる。そして、IUCN(国際自然保護連合)は、人間を救済する人間の世界遺産を見つけだすため、泉水子に働きかけ始めた!?泉水子と深行は、だれも思いつかない道のりへ踏みだす。姫神による人類滅亡の未来を救うことはできるのか―。ついにRDGシリーズ、完結。