「のろのろ歩け」中島京子
過去の作品と比べて、今回は趣向が違う。
全て海外が舞台。
「北京の春の白い服」・・・北京・・・日本人女性編集者が北京でファッション雑誌を立ち上げる話
「時間の向こうの一週間」・・・上海・・・夫の海外赴任にともない、アパートを探す話
「天燈幸福」・・・・台湾・・・母の3人の「知り合い」を訪ねて歩く話
私は、どの短編も好みであった。
P155、ルー・ビンと亜矢子の会話
「私は彼と結婚生活を続けることに耐えられませんでした。離婚の理由は感情の爆発です」
エモーション・エクスプロージョン、とルー・ビンは言った。
「中国では、離婚理由で一番多いのがこれです。このように書きます」
ルー・ビンはベビーカーのポケットからメモ用紙とペンを取り出し、白い紙にこのように漢字で書いた。
〈感情破裂。婚姻法32条〉
(日本で一番多い「離婚理由」は何だろう?「性格不一致」か?byたきやん)
P156-157
「雲南は天国のような場所ですか?」
「そうですね、たぶん、ルーザーズ・ヘブンかもしれません」
「ルーザーズ・ヘブン?」
ルー・ビンはまたメモ用紙を取り出して、こんどはこう書いてみせた。
〈失敗者的天堂〉
失敗者的天堂?ルーザーズ・ヘブン?負け犬の楽園?(中略)
「悪い意味ではありません。(中略)私たちはルーザーを、もっと一般的な意味で使います。いまは上海でも北京でもどこでも、みんな成功を目指さなくてはならない。とても疲れます。都会では誰もが、成功者か失敗者か、どちらかになる。もうそうれは疲れるから嫌です。そういうときに、わたしはルーザーになりたい、と言うのです。(後略)」
タイトルについて
「慢慢走(マンマン・ゾウ)」からきている。挨拶の言葉。
P69-70
「ザイチェンと、どう違うの?」
「ザイチェンは、シー・ユー・アゲイン。マンマン・ゾウは、そうだな、テイク・ケアかな。直訳するとのろのろ歩け、だからね。のんびり行けや、くらいの感じかな」
慢慢走。のんびり行けや――。
【参考リンク】・・・離婚原因ランキング
やっぱり「性格不一致」がランキング1位のようです。
勢いで結婚しても、一緒に生活して「こんなはずではなかった!」、と・・・。
様々な言葉に出来ない感情が込められている、と・・・。
→離婚の原因ランキング - 女性弁護士ナビ
【ネット上の紹介】
『北京の春の白い服』―1999年、中国初のファッション誌創刊に向けて派遣され北京で奔走する夏美。『時間の向こうの一週間』―2012年の上海、赴任したばかりで多忙な夫の代わりに家探しを引き受けた亜矢子。『天燈幸福』―「台湾に三人おじさんがいるのよ」という亡き母の言葉を手がかりに旅に出た美雨。時間も、距離も越えて、新しい扉をひらく彼女たちの物語。
【他の中島京子作品】
他にも読むなら、このあたりお薦め