MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『鏡の中の笑顔たち』

2015-06-06 00:25:45 | goo映画レビュー

原題:『鏡の中の笑顔たち』
監督:喜多一郎
脚本:喜多一郎/瀬古千裕
撮影:高間賢治
出演:白石隼也/夏菜/中尾明慶/松下由樹/ミッキー・カーチス/松原智恵子
2014年/日本

謎のまま残される息子と母親の関係について

 『種まく旅人 ~くにうみの郷~』(篠原哲雄監督 2015年)で淡路島の歴史が学べるように、本作においては訪問美容の様子を垣間見ることが出来るとしても、ストーリーそのものに驚きはない。2010年に全国理容美容学生技術大会札幌地区のコンクールで金賞を取ったり、全国大会で優勝したりしている「カリスマ美容師」の主人公の井上遼が自分の才能を過信し、周囲と不和になりせっかく採用された東京の美容室をクビになって札幌に戻ってきてから、訪問美容を経験したことで仕事の楽しさを知ることになるというストーリー展開は悪くはないが、想像できる範囲内であるだろう。何よりも、早くに父親を亡くした遼が母親の井上由紀を札幌に残して東京に行くことに関して由紀と喧嘩してしまうのであるが、20歳で独立して都会で働くことを決意した息子と母親が何故喧嘩してしまうのかがよく分からない。帰って来て一緒に住むようになった遼がお詫びとして母親の髪をセットすると約束しておきながら結局母親の髪をセットするシーンが映されることはなく、最後までこの息子と母親の関係は謎のままで終わってしまう。この親子の関係の悪さが遼が周囲と上手くいかなかった原因であるはずなだけに残念だと思う。
 だから本作の映画としての見どころは終始明るい雰囲気を振りまく夏菜の演技にあると思う。キラキラと目を輝かせながら東京の美容室には芸能人が来るのかと遼に訊ねる高橋まりを演じる夏菜こそ立派な芸能人である。


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