MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『泣いてたまるか 先生週刊誌にのる』

2015-06-08 21:37:00 | goo映画レビュー

黒木姉妹さん『正調 刈干切唄』の歌詞

原題:『泣いてたまるか 先生週刊誌にのる』
監督:深作欣二
脚本:深作欣二/北野夏生
撮影:森隆吉
出演:渥美清/石山律/中原早苗/高松英郎/小柳徹/名古屋章/沢田雅美/河内桃子
1967年/日本

 「正々堂々」という厳しすぎる倫理観について

 主人公の高校の生物教師の石田倉吉の周囲には2人の問題を抱えた人物がいる。元教え子の滝田慎一は2年でメインイベンターを務めるほどのプロボクサーになってはいたが、いわゆる「ジム・チャンピオン」で相手を追い詰めるまではいくのであるが「ガラスの顎」と言われるように不用意なパンチをもらって負けてしまい、生活が荒れていた。もう一人は石田が現在担任をしている今井和夫で、彼は大学に進学するつもりだったが、受験生になると仲間は全員敵となり、大学を卒業した後も不公平の上にあぐらをかいて学歴の無い年寄りを相手に威張り散らすだけだと人生に絶望して自殺未遂の騒ぎを起こしていた。
 石田は滝田が所属している「A・О・ボクシングジム」の会長の黒木を訪ねて話を聞き、滝田が試合に勝てない原因は素質はあるのだが憎しみが足りないからだと言われるのであるが、食事も満足に取れなかった極貧の生活から抜け出そうとしている滝田に世間に対する憎しみが足りないというのはどうも個人的には納得しかねる。
 2人に対して石田が身上とする「正々堂々と戦え」という教えに説得力があるとは思えないが、滝田は東京五輪優勝者の城南大学の高橋仁のデビュー戦の相手に選ばれ、ダウンを奪われながらも10ラウンドを戦い抜き、もちろん判定で敗れはするものの、その試合を石田と一緒に観戦していた今井にも勇気を与えて、今井は再び通学するようになる。
 何の勝算も無いままただ「正々堂々と戦え」を貫くという厳しい倫理観が描かれる本作は深作欣二の演出によるものであるが、それは写真にも写っているような「水飲み鳥」になれというメッセージである。とても理解しがたい話である。


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