原題:『ソロモンの偽証 前篇・事件』『ソロモンの偽証 後篇・裁判』
監督:成島出
脚本:真辺克彦
撮影:藤澤順一
出演:藤野涼子/板垣瑞生/佐々木蔵之介/夏川結衣/永作博美/黒木華/小日向文世/尾野真千子
2015年/日本
クライマックスで傑作になり損ねた作品について
『ソロモンの偽証 前篇・事件』を観終わった時点までは傑作だと思った。正確に言うならば『ソロモンの偽証 後篇・裁判』のクライマックスまでは傑作だと思って観ていた。主人公を演じた藤野涼子は「第二の黒木華」のような、神原和彦を演じた板垣瑞生は「第二の高良健吾」のような貫禄を持った演技をしていた(もちろん黒木華も高良健吾もまだまだ若手ではあるが)。しかし神原和彦が証人として召喚されたあたりから違和感が湧いてきた。何故ならば神原ほどの知性を備えた人物が裁判のルールを知らないはずはなく、無駄だと分かっていながら自分を罰するように求めるようなキャラではないからである。
俳優陣の奮闘もあってその点を除けば傑作と見なしても間違いないと思うが、なにぶんにも肝心のクライマックスが弱いところが難点だと思う。しかしこれだけの力作が「前篇は最終の興行収入が7億円前後あたり。後篇は順調にいけば、8億円近くまで数字を伸ばす可能性もある。前後篇で約15億円である。ただもちろん、これでも黒字にならない」(「シネマの週末」大高宏雄 毎日新聞夕刊 2015.4.17)ということだから厳しい。