原題:『The Search』
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
撮影:ギヨーム・シフマン
出演:アブドゥル・カリム・ママツイエフ/ベレニス・ベジョ/アネット・ベニング
2014年/フランス・グルジア
「演出間違い」を上手く利用する作品について
本作の冒頭のシーンが気になる理由は、若いロシア兵たちがチェチェン人の夫婦と彼らの娘を尋問している最中に一人のロシア兵がその夫婦を次々と銃殺し、娘のライッサが倒れた2人をかばうようにした時、現場から少し離れた家から「やめて」と何度も声が聞こえてきて、ロシア兵がそちらに目を奪われて家の中に誰かいるのか探そうとしたことでライッサが助かったように見えるからである。
ここで古いハンディーカメラの映像からヴィスタサイズのクリアな映像に変わるのであるが、家の中にいたのは主人公の9歳のハジと赤ん坊の彼の弟で、ハジは息を潜めて窓から見ていたのであるが、ロシア兵はその赤ん坊の泣き声を聞きつけて家に近づいてきているのである。それならば「やめて」と叫んだのは誰なのかということになると思うのであるが、敢えて「つなぎ間違い」をして残された「本物」のフィルムを元に構成された映画のように装う演出が上手い。
もう一人の主人公である19歳のコーリャにしてもギターを抱えながらマリファナを吸っていたのだから、社会に対してそれなりの反骨精神があったのであろうが、軍隊に所属させられてからはロックどころではなくなる。結局、ハジとコーリャの違いは出会った人によるものだということであろう。ハジにはまだビージーズの「You Should Be Dancing」を踊れる余裕があった。