原題:『娘の季節』
監督:樋口弘美
脚本:馬場当
撮影:萩原憲治
出演:和泉雅子/杉良太郎/芦川いづみ/日色ともゑ/川地民夫/中尾彬/北林谷栄
1968年/日本
バスのワンマン化の「火種」について
本作を観て誰もが抱く違和感は、主人公のバスの車掌を務める津村みどりの上司で寮長の堀込康子が左腕を失っているという設定であろう。康子は勤務中に危険なステップ乗車をしていて対向車のトラックとの接触で「片端」になったのである。
しかし康子は努力の末、右手だけでマッチを器用に操りバスの運転手である古橋次郎の煙草に火をつけるのだが(写真左)、健常者であるみどりは古橋の煙草に火をつけようとしないのである(写真右)。時代はバスがワンマンになるかならないかの過渡期である。康子とみどりの振る舞いの違いは明らかにバスの「ワン」マン化の暗示であろう。しかし古橋に対するみどりの熱意によって康子が身を引いて退職することでひとまずバスの車掌の首はつながるのである。