MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『予告犯』

2015-06-09 23:40:25 | goo映画レビュー

原題:『予告犯』
監督:中村義洋
脚本:林民夫
撮影:相馬大輔
出演:生田斗真/戸田恵梨香/鈴木亮平/濱田岳/荒川良々/宅間孝行/小日向文世
2015年/日本

努力も才能の一つであることの悲劇について

 主人公のゲイツこと奥田宏明が「ピットボーイ」というネットカフェの六本木店にいることを突き止めた警視庁サイバー犯罪対策課のキャリア捜査官である吉野絵里香が店内に入るなり大声で捜査することを宣言することは既に犯人が使用している部屋まで突き止めているのだからから常識としてはありえない。だから新聞紙を被った犯人に逃げられるのであるが、その犯人を追っている途中で、吉野はどこかで見おぼえのある顔を見つけ、その顔がネットカフェの監視カメラで見た犯人の顔だと気がつき後を追う。その吉野に気がついたゲイツは逃げるのであるが、なかなか吉野を撒けない。この追いつきそうで追いつけない追跡劇の長いシークエンスは、吉野がようやくゲイツに追いついた時に吉野がゲイツの屍を抱きしめなければならないことで悲劇の増幅に貢献することになる。
 東京大学の法学部を卒業している吉野がエリートであることは間違いないが、小学生の時にはイジメられていたのである。それでも努力の結果、「勝ち組」になれたという自負があるのだが、それは努力できる「才能」と「余裕」があるから成し遂げられたのであって、ゲイツだって頑張っていたはずなのだが、努力し過ぎて体を壊してしまってはどうしようもないのである。
 かつてのATG映画を彷彿とさせる青春映画の傑作を久しぶりに観たように思うが、それはあくまでも努力が報われない現代の若者たちの挫折の物語である。


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