原題:『ウルトラQ 東京氷河期』
監督:野長瀬三摩地
脚本:山田正弘
撮影:内海正治
出演:佐原健二/西條康彦/桜井浩子/田島義文/有馬昌彦/佐藤英明/野本礼三/杉裕之/伊藤実
1966年/日本
リルケの『マルテの手記』の不正確な引用について
桜井浩子が演じた毎日新報のカメラマンである江戸川由利子は上野駅の取材のシーンでドイツの詩人のライナー・マリア・リルケの『マルテの手記(Die Aufzeichnungen des Malte Laurids Brigge)』(1910年)の冒頭を暗唱している。脚本を執筆した山田正弘が元々詩人だからなのであるが、その引用は正確ではない。由利子は「現代の旅人は何を求めてこの大都会に集まってくるのか? 詩人リルケは言ったわ。『僕にはただ死ぬためにだけ集まってくる蟻のように見える。』東京は苦い砂糖なのよ」と言うのだが、英訳では「Here, then, is where people come to live; I'd have thought it more a place to die in.(ここに人々は生活の場としてやって来る。僕には寧ろ骨を埋める場所のように思える。)」となっており、蟻という言葉は無く、ここではいわゆる東京に出稼ぎに来る「働きアリ」と呼ばれていた人々を皮肉って山田正弘が加えたものであろう。