原題:『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』
監督:山口雅俊
脚本:山口雅俊/福間正浩
撮影:西村博光
出演:山田孝之/綾野剛/永山絢斗/やべきょうすけ/崎本大海/最上もが/八嶋智人/真野恵里菜
2016年/日本
「ウサギ」と「共闘」の違いについて
ファイナルにおいては丑嶋馨の過去が明らかになる。そこで登場するのが、かつての中学校の同級生で2年生の時に転校してきた丑嶋馨に対するリンチに加わらなかった竹本優希である。ところがそれから12年後、丑嶋が設立した「カウカウファイナンス」を一緒に営んでいるのは竹本ではなく、そのリンチの首謀者だった柄崎である。退院後にリンチに加わった相手を一人ずつ殴り倒していった丑嶋の前に、友人の加納が拉致されたということで土下座して救いを求めた柄崎と共に、鰐戸3兄弟らと喧嘩をし、加納を救い出した代わりに、丑嶋は少年鑑別所へ入ることになったのである。
丑嶋の飼っていたウサギを預かっただけの関係と、強敵を相手に一緒に死闘を演じた関係は12年後の人間関係に大きく反映されている。だからと言ってもちろん竹本は悪い人間ではなく、どちらが悪いかと問われればむしろ柄崎の方であろう。竹本は仕事場で重傷を負った黒田の治療費を捻出しようとしたり、手に入れた5000万円の現金を甲本を初めとする20人の現場の仲間たちの再起のための資金として使おうと試みたりするからである。
しかしよくよく考えるならば、それは丑嶋がしている「金貸し」と同じことであろう。経験則に従うならば、竹本のやり方では例え資金があっても立ち直れる人間はいないことを丑嶋は身に染みて分かっている。竹本の「善意」は甘いのであるが、悪意はなく結局全責任を一人が背負うことになる竹本に対して丑嶋は珍しく最後まで逡巡している。シリーズ最後までテンションが落ちることなく期待を裏切らない出来である。