原題:『少女』
監督:三島有紀子
脚本:三島有紀子/松井香奈
撮影:月永雄太
出演:本田翼/山本美月/佐藤玲/真剣佑/児嶋一哉/白川和子/稲垣吾郎
2016年/日本
トラウマと因果応報の関係について
作品の途中まではまるで難解なアート系作品のようでなかなかストーリーが展開しないのであるが、後半になるとだんだんと分かりやすくなってくる。
転校生の滝沢紫織の「親友の死体を見たことがある」という告白に主人公の桜井由紀と草野敦子が敏感に反応し、由紀は「A子のために」授業中にも『ヨルの綱渡り』という小説を書いているが、それは少々歪んでおり、敦子を救うつもりで敦子を学校の屋上から落とす幻想を由紀は見る。
夏休みになると由紀は小児科の病棟で、敦子は特別養護老人ホームでボランティアを始め、それぞれ死に対する探求を試みるのであるが、それは由紀には祖母の体罰のトラウマがあり、敦子には剣道部の大会の決勝戦で負けたことによる同級生たちからのいじめがトラウマになっていることと関係があるだろう。
敦子が老人ホームで知り合った高雄孝夫と由紀が関わっている小児科の病棟に入院しているタッチーが実の親子として偶然出会うことになるが、痴漢の冤罪によって家庭が崩壊したことを知らないタッチーは孝夫の腹部をナイフで刺して怪我を負わせてしまう。それを目の当たりにした由紀は人の死を見たいと思いながら実際に見てしまうとパニックになってしまい、敦子に病室から出されて救われるのであるが、それは幼い頃に由紀が怪我をして巻いていた包帯から血が滲み出て敦子が連れ出した状況の再現となる。敦子は老人ホームで大福を咽喉に詰まらせたおばあちゃんを掃除機で助けるのであるが、そのおばあちゃんは由紀の祖母なのである。
そもそも由紀はタッチーの友人で一緒の病室に入院している昴の父親の居場所を探していたのであるが、父親の居場所を教える代償として体を求めてきた三条という男は痴漢されたと嘘を言い男たちから金を巻き上げていた滝沢紫織の父親で、警察が三条の家に家宅捜査に入った際に、部屋から女性用の下着が大量に見つかる。結果的に、紫織が「遺書」を残して自殺に追い込まれる。
『ヨルの綱渡り』とは実は綱渡りをしているつもりでも、夜が明けて陽光が届けば綱だと思っていたところには道があることを知り、恐怖がなくなるという話で、ようやく国語教師の小倉一樹によって引き起こされた「因果応報」の呪縛から逃れた由紀と敦子は元気になって学校に通うようになるのである。「詩的」な割りには上映時間が長すぎるような気がする。