MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『SCOOP!』

2016-10-03 00:08:27 | goo映画レビュー

原題:『SCOOP!』
監督:大根仁
脚本:大根仁
撮影:小林元
出演:福山雅治/二階堂ふみ/吉田羊/滝藤賢一/斎藤工/リリー・フランキー
2016年/日本

「知性」を捨て「汚れ」のイメージを選ぶ俳優について

 主人公の都城静を演じた福山雅治は本作でそれまでの自身のイメージを変えようと試みたようだが、それが上手くいっているとは思えなかった。本作にしてみたところでストーリーの基本的な構成は今年フジテレビで放送されたドラマ『ラヴソング』の、ヒロインを育てる元プロミュージシャンの中年男性がしがないプロカメラマンに代わっただけである。
 前半の下ネタのオンパレードが福山雅治の本来の姿と言われればそれまでではあるが、クライマックスには問題があると思う。都城静は情報屋のチャラ源には昔大変に世話になっていたようで、それが薬で妻を殺してしまったチャラ源に最後まで付き合う原因になった。そこの詳細も描かれてはおらず、バイセクシャル同士でもないようだから何故そこまでしなければならないのか疑問が生じるのだが、敢えてそこは不問にしよう。
 事件前に都城静はルーキーの行川野火にロバート・キャパ(Robert Capa)の写真『崩れ落ちる兵士』を見せて自分がプロのカメラマンになった経緯を語る。その後、クスリで頭がおかしくなったチャラ源が都城に電話をかけてきて、都城と行川は車で現場に向かう。
 現場近くに到着すると都城は自分一人で行くからと言って行川を置いていくのであるが、行川は都城のデジタルカメラを勝手に持ち出して都城たちの後を追うことになる。都城はチャラ源と彼の娘と共に警官に囲まれながらも街をうろついているのであるが、その様子をカメラで撮ろうとしている行川を見つけたチャラ源が行川を撃とうとし、それを止めに入った都城を誤って射殺してしまうのである。その時、都城の「撮れ」と言う心の声に従うように行川は決定的なスクープ写真を撮るのであるが、ここまでのストーリーの流れが良くない。行川がいなければ都城は撃たれていないし、都城は行川に一緒に来るなと言っていたのだから、自分の身を挺してまで行川にスクープ写真を撮らせるつもりはなかったはずなのである。
 さらに言うならば写真家を志すきっかけになった『崩れ落ちる兵士』に関するノンフィクション作家の沢木耕太郎の分析を都城が知らないということはありえないはずで、そのような「フィクション」に関する考察がなされる訳でもなく、ファンの人をがっかりさせ、ファン以外の観客もがっかりさせる福山雅治が今後自身のイメージをどのようにもっていきたいのか全く分からなかった。


(『崩れ落ちる兵士(The Falling Soldier)』)


(寧ろ本作に相応しい写真はエディ・アダムズ(Eddie Adams)によって撮られた
『サイゴンでの処刑 (General Nguyen Ngoc Loan Executing
a Viet Cong Prisoner in Saigon) 』の方であろう。)


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