原題:『闇金ウシジマくん Part3』
監督:山口雅俊
脚本:山口雅俊/福間正浩
撮影:西村博光
出演:山田孝之/綾野剛/本郷奏多/浜野謙太/藤森慎吾/白石麻衣/筧美和子/最上もが
2016年/日本
「ワイルドサイドを歩く」ことについて
今回の主役は派遣の仕事で辛うじて生計を成り立たせている沢村真司と、妻がいながら会社の同僚の瑠璃やキャバクラと交際しているサラリーマンの加茂守の2人である。沢村は街角で写真撮影をしていたところをたまたま見かけたタレントの麻生りなと、インターネットで月収1億円を稼ぐという「天生塾」を主宰する天生翔が開くパーティーで再会し、セミナー代などを費用を借りるために、加茂はキャバ嬢の花蓮こと花織に貢ぐために「カウカウファイナンス」に関わるようになる。つまり沢村は仕事を得るために、加茂は女を得るために丑嶋馨から金を借りるのである。
一見対照的な2人なのだが、共通していることは「はったり」という点であろう。それを天生は「自分自身のブランディング」と呼び丑嶋は「パッケージ」と呼ぶのであるが、不思議なことに自信を持って嘘をつける人に人々は魅了されてしまうのであり、そのことに気がついた沢村は天生翔を真似てセミナーを催し、加茂は花蓮に良いところを見せようとする。しかしその2人の「はったり」を陰で支えているのが「カウカウファイナンス」なのである。
不幸なことに加茂は愛人たちも妻も失い閑職に追いやられ、密かに人事考課表を改竄して会社から追い出したはずの同僚の曾我部は新しい職場を得ている。一方で、沢村は試行錯誤しながら親子の農業体験の仕事を始め、沢村の「夢ノート」を見ていてそこを訪ねてきた麻生りなとの関係の修復にも希望を見いだす。りながパーティーで沢村に言った「屋上の縁の端から端まで歩け」とは見かけとは裏腹の地味な作業だったのである。まだ救いのあるゲス男と、もはや救いのないゲス男がいるのである。
白石麻衣と藤森慎吾の意外な好演も手伝って期待を裏切らない佳作である。