青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

九州サマードライブレポ No.7

2006年09月06日 22時47分02秒 | 日常
(写真:最南端の昼下がり)

朝9時に列車が着いてから、13時まで列車が来ない…
指宿枕崎線の山川以西は超ド級の閑散線区だな。
開聞岳の周辺をフラフラして、結局列車が来るまで待っている自分もスキモノだが(笑)。

●100年の歴史
夕飯を終え、風呂にも入り、カメラを引っつかんで外へ出る。
嘉例川(かれいがわ・リンクはウィキ)と言う駅を知っている人はいますか。この何の変哲もないJR肥薩線の小駅は、肥薩線の開業当時である明治36年1月15日に開業した当時のままの姿で残っており、その歴史はおよそ100年。鉄道文化遺産と言うべき非常に貴重な駅でもあります。
時刻はとっぷり日も暮れた午後7時。嘉例川駅は、さかいだ温泉から車でほんの10分程度の場所にある。田舎の駅らしく駅前に玉砂利が引かれた集落の中の小駅が、夜の闇に静かに包まれながら佇んでおりました。白熱球の明かりがぽうと照らす駅名板…うーむ。その佇まいは非常に郷愁を誘う。

駅の中に入ってみる。色褪せた銘木の作り、駅員の消えた出札口には昔を偲ぶ写真が飾られて、花や駅ノートなども置かれておりしっかりと小さな観光名所となっている様子だが、もうこの時間には誰もこの駅から乗る乗客はいないのだろう。駅の外の集落も、ひっそりと窓の隙間から明かりをこぼすのみの静寂である。
ホームに出てみる。いかにも「改札口」と言う形をした木の格子が印象的だ。柱の一本一本、梁の一本一本が頑丈に出来ている。ある程度レストアはされているのだろうけど、時と風に洗われたらしい風合いが出ているように思う。
この路線は、現在こそ肥薩線としてローカル線に成り下がっているが、開業当時はこのルートが「鹿児島本線」であり南国への主要幹線であった。「海回りは列強の艦砲射撃の目標になる」と言う軍の要請で、まずこの人吉経由山回りのルートが敷設され、八代から出水・川内を通って海回りで鹿児島に至る鹿児島本線が建設されたのはだいぶ後なんだそうな…まあ、そんな鹿児島本線も九州新幹線の開業でJRから捨てられてしまっているのだけれど。歴史は流れる。

ホームの隅で三脚を立てて列車を待ってみる。
夕立で列車のダイヤは乱れているらしいのだが、夜の無人駅には案内放送など何もない。それでも集落のはじっこにあるのだろう踏切の「カン・カン」と言う警報機の音が列車の接近を知らせてくれた。おもむろにファインダーの中を覗き込んで、バルブで長時間露光をやってみる。

単行の列車は宵闇の駅に滑り込み、ドアが開く
ファインダーの中を覗いていた自分には、なぜか何も音が聞こえませんでした。

●ふるさとを遠く離れて
翌朝、やっぱり朝5時にこっそりと宿を出る。いよいよ最南端へのアプローチである。溝辺鹿児島空港ICより九州道へ入り、桜島SAで給油。スタンドのおっちゃんに「どこまで行くの?」と声を掛けられる。そう言うナンバーで走っている事が何となく満足でもある(笑)。薩摩吉田ICで降りて鹿児島市内へ。ひどい朝霧で全く視界が利かない。桜島の眺望すらない。この朝に鹿児島と川薩姶良(せんさつあいら)には濃霧警報が出ていた。あ、「川薩姶良」ってのは鹿児島に来て始めて知りましたね。例えば青森の「三八上北(さんぱちかみきた)」とか、こう言う気象上の地域区分にはもの凄く旅情を感じるのだが。
鹿児島市内に突入。西郷どんがお出迎え。そして、リアル神ステージへの誘いなどを眺めつつ(笑)、まずは市内で行ってみたいトコがあったので行ってみる事にしましょう。
※…R58と言うのは鹿児島県鹿児島市から種子島、奄美大島を経て沖縄本島の那覇に至るれっきとした幹線国道で、島と島の間はフェリーで一応繋がっていることになっています。俗に言う「海上国道」ってヤツですね。まあ、R58の海上区間は日本で一番長いでしょう。

●黒歴史を紡いで
鹿児島県営鴨池球場
ロッテの黒歴史を知りたければここへおいで。カネやんが桜島大根をかついで高らかに選手をランニング地獄に落とした鴨池。古川と西村と横田が練習もせずにミス鹿児島ゲットにいそしみまくった鴨池。紅白戦で3本ホームランを打って「桜島打法完成!」と珍しく新聞の記事になった古川がシーズンでは8本しかホームラン打てなかった鴨池。落合がサブローに「30本は堅い」と太鼓判を押した鴨池。バリーが「アラスカより寒い」と言った鴨池。ローズが途中で野球に自信がなくなった鴨池。ああ、思い出すのは黒歴史ばかり。現在の千葉ロッテマリーンズと言うより、ロッテオリオンズのイメージが濃い。要するに暗黒臭にまみれたそんな鴨池球場に、生まれて初めて来てみる。何となく匂いがなつかしいのは、結局私も川崎暗黒礼賛主義者なのか。
ナイター用の照明の柱によじ登ってグラウンドを覗いてみる。あ、左側の一塁側ベンチの横に「LOTTE」の広告がありますねw

●いざ、南国の陽光へ
個人的には暗黒臭を嗅いでおおいに満足(笑)したので、さらに南へ車を走らせる。余計な寄り道をしたせいで鹿児島市内の朝のラッシュにガッツリつかまり、なかなか車が前に進んでいかない。燃費もみるみる下がって行く。ガソリン高騰の折、一本くらいはボトルキープさせていただきたい喜入の国家石油備蓄基地(笑)なぞを右手に見ながら、車は指宿市街へ。無駄に植えられたフェニックスが南国をアピール。

●南海の秀峰を目指して
今回の旅の目的…まあ、九州を愛車で走る事がまず目標だったのだけれど、じゃあどこまで行くのよと言うランドマークを設定するに当たって、ピンと閃いたのがとある山の存在。それが、薩摩半島の最南端に当たる「開聞岳(かいもんだけ)」であります。
開聞岳は、山としては924mの小規模の山ではあるんですが、「薩摩富士」と言われるその山容の美しさ…特に夕日の開聞岳は、昔何かの写真集で見た事があるのだけれど、息を呑むほどのものであった事を強烈に記憶している。
そして、等高線でこの山の形を見てみて欲しい。「誰ですかここにバームクーヘン置いたのは?」と思わずにいられない、実に不思議な山の形をしているのである。くじゅうも、阿蘇も、霧島も、その道中の色々な景色もとりあえず素晴らしかったのだけれど、締めにはそれに相応しい風景をこの目に焼き付けて、そこから引き返そう…、と、そう思ってここまで車を走らせて来た。

指宿の市街を抜けると、山川町。もう開聞岳まで僅かの距離なのだが、まだ山は見えない。山川の漁港を抜け、開聞の台地に上がる坂道を登ると、ぽかんと視界が開ける。イモ畑の真ん中を真っ直ぐに農道が続いて、そして視界の左手にあの山が飛び込んで来た。

開聞岳キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!!!

南国の朝の日差しを浴びて、すっくと立ったその山の形の秀麗な事。
専門用語で言うと「円錐火山」なんだけど、そんな言葉では無粋過ぎる裾野の広がりの美しさ。
上から見るとバウムクーヘンだが、横から見ると甘食パンのようでもあるw

結構、今年一番の感動でした。

続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする