毎週毎週子供を連れての神奈川鉄ネタ掘り起こし、いつかはネタも尽きるのでしょうけれども、ない頭をひねり出せばそれでもまだまだあるものである。昼から雨の上がった土曜日、春のような暖かな風に乗って訪れたのは横浜市鶴見区。一応ここも横浜市ではありますが、いわゆる世間一般的なハマ(関内やみなとみらいや元町)の雰囲気とは一線を画した、煤けた工場と路地裏の世界。そして今でも日々の生活に密着した大きな唐破風の銭湯が似合う、いわゆる品川から大田を通って川崎の流れを引き継ぐ町工場の下町。青いガードがイチコクを跨ぎ、そのたもとにある駅から電車に乗ってみましょう。え?どこに駅があるって?
ここにあるじゃん、JR鶴見線・国道駅。
心なしか…いや心なさなくても何となく色褪せた看板に風味があるよね。もちろん国道ってのはこの駅の下を走るイチコクの事なんだけどさ。あ、「イチコク」=第一京浜国道=国道15号で、「ニコク」=第二京浜国道=国道1号で、「ダイサン」=第三京浜=国道466号ってのは城南地区から川崎・横浜の一部地域特有の呼び方ですね。これが戸塚の向こうになるとコクイチ=国道1号になるので、県内でもちょっと紛らわしかったりする。
この国道駅、改札口は鶴見線の高架下のガードにあります。まあお好きな方には有名ですけど、昭和5年に鶴見臨港鉄道として開業した当時のそのままの姿を世に残しておりまして、そのガードの佇まいたるや…なんかね、昭和21年の上野とか言われても不思議じゃない。昭和レトロと言うよりも、焼け跡とか闇市とか戦災孤児って言葉が似合うような「戦後間もなく感」がある。…野坂昭如の「火垂るの墓」の雰囲気と言えばいいのかね。
長さにしてみりゃものの100m程度のガード下、ガード下に露出を合わせると向こう側の路地が吹っ飛ぶのだが、それだけこのガードの薄暗さと言うか陰気臭さが際立つというもの。実際このガード下は一杯飲み屋やら釣り船宿やら一般の住居やらがそれこそゴチャゴチャとひしめき合っていたようなのだが、最後の最後に焼鳥屋が長期休業に入って全ての店が活動を終えているようだ。ボロいのに、上部が鶴見線の高架になっている以上躯体としてのガード下を撤去できないため、今更どうにもならないと言うのは去年秋に訪問した電鉄魚津の駅に似ている。
雨上がりで暖かくなった土曜日、このガード下だけ寒く暗く湿っぽく、瘴気のような薄モヤがたなびく木造ラッチの残る改札口。鶴見線の駅は起点の鶴見以外基本的には無人化されてしまっており、ここも簡易のSuica読み取り機が番をしているにすぎない。監視している人間もおらず、鶴見線内での乗降ってのは基本的に乗客の良心に任されているようなものである。が、沿線の工場へ通勤する客が定期を買っててくれれば、あとのモノ好き(私のような)が来る程度はもはやどうでもいいのかもしれない。いや、PASMOで入りましたけどね。ちゃんと。
子供が不思議がり、ヨメが不気味がる国道駅ガード下。…少なくともヨメと子供を連れて来る場所ではなく、本来なら一人でふらりと訪れてその雰囲気にどっぷり浸るべきだったか(笑)。ヨメが「なんかヘンなニオイがする」と言うのだが、そのニオイの元は改札横にあったトイレだった。おっそろしく臭いのはともかくこの時代に堂々と男女共用だったのを見て、どっかでこの雰囲気を見たようなデジャヴ感が湧き上がって来たのだが…
…ここの雰囲気、薄暗さといい木造の改札といい共用トイレといい川崎球場のバックスクリーン裏にあった外野席入場口とそっくりじゃね?(笑)。そういやこっから川崎球場なんて直線距離で5kmも離れてないしなあ…あの雰囲気をライブで体験してる世代はもういいオッサンだと思うのだけど、知ってたらこの感覚は絶対分かってくれるような気がするんだけど(笑)。
改札口を入って、ホームに向かう階段の踊り場から一枚。そう思うと、この階段が川崎球場の外野席に繋がってて、「家具のオケウシ」とか「酒は会津の花春」とかの看板があって、ロッテ対阪急がやってて、先発が山沖とシャーリーとかでも全然驚かないっすよアタクシはw
国道駅のホーム。ホームの上屋の柱がそのまま架線柱になってアーチのように架線のカテナリを吊ってるこの感じ、JRと言うより国電で、国電と言うより省線電車、と言うのがぴったり来る。こんな雰囲気は京急だと日ノ出町とか、戦災で焼失したまま平成まで存置された旧平沼駅を思い出します。本来であれば73系とかのチョコレート色の旧国がしっくり来る国道駅にやって来た205系の浜川崎行き。きっついカーブの上にあるホームと車両の隙間が半端なく、乗り降りにはご注意されますよう。
この後家族で浅野→海芝浦→浅野→浜川崎→八丁畷→花月園前と回って来たんだけど、海芝浦の話は前もした事あるので割愛します(笑)。鉄道雑誌とかで取り上げられる機会が多くなったせいか、以前に比べて海芝浦も来る人が多くなったような…
つーか、ウチの息子は南武線に乗る前に南武支線を体験してしまったんだなw
これって結構レアケースかもしれん。
大人になったらみんなに自慢していいぞ!(するのか?)