tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

天川村・民宿あおば「朴の葉すし」/5つ星のお宿のスグレモノ!

2017年06月06日 | 奈良にこだわる
今年も天川村の「民宿あおば」さん(吉野郡天川村北小原24 TEL/FAX 0747-63-0478 横田さん)から、「天川名物 朴の葉すし」を送っていただいた。柿の葉ずしとはまた違った味と香りの郷土ずしである。民宿あおばは、楽天トラベルで5つ星に輝く「もてなしの宿」だ。おもてなしも食事も宿泊施設も、申し分ない。食べログの「口コミ」にも、

宿のご夫婦の人柄がとても良いのが人気の最大の理由。70代の老夫婦が親切に近くの温泉まで車で送ってくれました。食事は宿泊者全員で同じ部屋で食べます、お互いどこから来たのか話しながらスタート。更にご夫婦が目の前に一緒に座り話し相手になってくれます。

料理は地元の食材をベースに家庭料理の味がとても美味しかったです。更に生の鹿肉を目の前で揚げてくれたり、それぞれ趣向をこらした料理でした。これで一泊二食で8000円台とは考えられない安さです。朝食も卵焼きも美味しかったですし満足しました。


と紹介されている。この朴の葉すし、私は長年、柿の葉ずしの「柿の葉」の代わりに「朴の葉」を使ったものと理解していたが、そうではないかも知れない。朴の葉は食器(葉皿)として使われてきた長い歴史があるのだ。『日本大百科全書』の「食器」によると、


6月2日に発送されたものを翌3日にいただいた。少し馴れて、より美味しくなる

食器の源流としては次の2種類が考えられる。一つは土器であり、縄文時代よりまず最初に煮炊き用、貯蔵用が現れ、それから狭義の食器が登場する。(中略)もう一つの源流は葉皿である。葉皿は煮炊き用具、食器になり、また餅(もち)や団子などを包むパッケージにもなる。

『万葉集』には、有間(ありま)皇子の次のような歌がある。「家にあれば笥(け)に盛る飯(いい)を草枕(くさまくら)旅にしあれば椎(しい)の葉に盛る」。この歌のなかの笥とは「葦(あし)または竹を編んでつくる飯または衣服を入れる四角な箱」のことであり、椎の葉に盛ったのは、椎の葉のついた枝を竹ひごでつなぎ合わせて皿としたものと思われる。

この葉皿は現在でも使われ、岐阜県高山市では煮炊き用、食器用として朴(ほお)の葉が売られている。奈良県奥吉野で朴の葉寿司(すし)、長野では朴葉巻きがつくられており、宮中の新嘗(にいなめ)祭では柏(かしわ)の葉でつくった皿が用いられている。




朴の葉は、干して味噌や山菜を載せて焼く「朴葉味噌」や、こねた米粉で小豆餡を包み、朴の葉で巻いて蒸しあげた「朴葉巻き」など、いろんな料理に使われる。葉皿やパッケージとして使われていた朴の葉が、いつしか柿の葉寿司のような押し寿司に展開していった、と考えることはできないだろうか。

美味しい「天川名物 朴の葉すし」を頬張りながら、つらつらとそんなことを考えた。民宿あおばのご主人、奥さん、いつまでも伝統の味を受け継いでいってください!

追記(2017.6.6)
2005年、奈良県の「もてなしの心に触れた提言・体験談」に私が応募し、入選したときの文章が出てきたので、以下に全文を紹介させていただく。


「もてなしの心に触れた事例」と聞かれて、まず思い出すのは天川村での体験である。今年(2005年)8月末近く、遅い夏休みを取ってこの村を訪ねた。家族との日程調整がつかず、思いがけない3日間の気ままな一人旅となった。

村ではずいぶん多くの方のご厄介になった。総合案内所の職員さん、「栃尾観音堂」のご近所さん、「みずはの湯」の常連さん…。なかでも特筆すべきは、3日間お世話になった「民宿あおば」だ。

浪花っ子のご主人は、都会人の目線で、この世界遺産の村の素晴らしさを語って下さった。地元出身の女将さんの手料理は、とても美味しかった。アマゴの塩焼き、名水豆腐に刺身こんにゃく、それに地場の野菜を使った郷土料理の数々。自家製のトウモロコシやスイカは、とろけるように甘かった。

夜、ご主人から「星を見ませんか」と誘われた。表に出ると、澄みわたった満天の星空に天の川、そこに幾筋もの流れ星。夜風に乗って、川のせせらぎと虫の声が聞こえて来る。いつまで見ていても見飽きなかった。あんなに長い時間、星空を眺めたのは何年ぶりのことだったろう。
 
翌日はご主人のお薦めに従って「観音峰(かんのんみね)」という山に登ることにした。女将さんは昼食のおにぎりに、名水のペットボトルとおやつの「ゴマせんべい」まで持たせてくれた。頂上では、開き始めたススキの穂が風にゆらゆら揺れていた。涼風に吹かれながら食べたおにぎりの味は、格別だった。

訪れた土地の生活文化を体験するのが旅行の醍醐味だとは常々思っていたが、今回の旅は、まさに目的にかなったものとなった。思えば最近は、宿泊といえばマニュアル対応のリゾートホテルや会話がなくてすむビジネスホテルばかりだった。

久々に心のこもった歓待を受け、どこかに置いてきた忘れ物を突然思い出したような気持ちになった今度は家族を連れて再びこの村を訪れよう、そして「民宿あおば」に泊めていただこう、と今から楽しみにしている。
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