世界一訪れたい日本のつくりかた | |
デービッド・アトキンソン | |
東洋経済新報社 |
デービッド・アトキンソン氏の最新著『世界一訪れたい日本のつくりかた 新・観光立国論【実践編】』を読んだ。私がピンときたのは、以下の10点である。
1.世界で観光業は、自動車産業を上回る規模(エネルギー、化学製品の次)
2.日本の観光国際競争力は、世界で第4位。2年前からの改善率は、世界一
3.アジア客6割、欧州客2割強が理想的。欧州が一番の伸びしろ
4.狙うべきはフランス人ではなく、ドイツ人。ドイツ語で情報発信を(フランス人はあまり海外旅行をしない。ドイツ人はよく海外旅行をするし、アジアをよく訪れるから)
5.「量」優先の「昭和の観光」(多くの団体客を一度に受け入れ、効率よくおカネを落とさせる。今も中国人観光客に適用している)では、お客の満足度が低くなる
6.「質」を高めれば「量」も増やせる。過去の常識を再検証しよう
7.アジアからのリピーターと、欧米からの女性観光客(買い物好き)を狙おう
8.儲けの9割はホテル。5つ星など高級ホテルをもっと増やそう
9.観光立国には「文化スポーツ観光省」が不可欠(文科省では「産業化」はできないから)
10.さまざまなものを「観光業化」し、外国人を迎え入れよう(観光をテコに)
Amazonの「内容紹介」には、より詳しく本書の内容が掲載されているので、以下に貼っておく。
【観光業を大進化させたベストセラー『新・観光立国論』著者の“最新”提言!】
過去数年で、日本は「観光の後進国」から「発展途上国」になりました。さまざまな実績が出始めており、街で外国人観光客を見かける機会も増えました。
しかし、日本の潜在能力を考えると、まだまだこんなものではありません。日本は、やるべきことをやりさえすれば、「世界第5位の観光大国」になれる潜在能力があります。本書では、日本が「6000万人の外国人観光客」を招致できる真の「観光先進国」になるためにとるべき方策を、あますところなく解説します。
■どう分析するか?
→フランス人よりもドイツ人を呼ぶべき理由
→観光収入の9割は「これ」で決まる
→日本の「地の利」が最強な理由
■何を整備するか?
→「サービス」の概念を根本から改めよう
→日本人だけが気づいていない「観光資源」とは
→カジノは最強の「集金システム」である
■いかに発信するか?
→「翻訳」はもう止めよう
→外国人には「意味不明」な写真とは
→「&Tokyo」がダメなわけ 他
【主な内容】
はじめに 観光はもっとも「希望のある産業」である
第1章 日本の「実力」は、こんなものじゃない
――「大観光時代」を迎える世界と日本の現状
第2章 「どの国から来てもらうか」がいちばん大切
――国別の戦略を立てよう
第3章 お金を使ってもらう「魅力」のつくりかた
――「昭和の常識」を捨てて、質を追求しよう
第4章 自然こそ、日本がもつ「最強の伸び代」
――「長く滞在してもらう」ことを考えよう
第5章 「誰に・何を・どう伝えるか」をもっと考えよう
――「So what? テスト」でうまくいく
第6章 儲けの9割は「ホテル」で決まる
――「高級ホテル」をもっと増やそう
第7章 観光は日本を支える基幹産業
――あらゆる仕事を「観光業化」しよう
おわりに
この本は、内容がいいのはもちろんだが、レイアウトがとてもよくできている。大事なところに赤の網掛け(ちょうど蛍光ペンでマークしたように)がしてあるし、各章の最後に要所が簡潔にまとめられている。だから、うっかりポイントを外すようなことがない。おかげで私も勘所を10点にまとめることができた。
アトキンソン氏をお迎えしてのシンポジウムも目前に迫ってきた。そこでは「日本一訪れたい奈良のつくりかた」を議論したいと思う。どんな成り行きになるか、今から楽しみだ。