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国連IPCCが「断定」、人間の活動が地球温暖化を引き起こしている!

2021年08月24日 | 環境問題
読売新聞の解説面(2021.8.19付)に、〈異常気象拍車 災害相次ぐ IPCC報告書 気温上昇「人が原因」断定〉という記事が出ていた。国連のIPCCが8月9日に発表した報告書について、詳細かつ分かりやすくまとめた解説記事である。今回の報告書は「人間の活動が地球温暖化を引き起こしている」と、初めて「断定」したことが特徴だ。遅きに失した感はあるが、これは大きな進歩である。

長雨や竜巻の発生、台風の大型化など、すでに異常気象とみられる現象が続出している。国際的にはESG(環境・社会・ガバナンスの3つの観点)やSDGs(持続可能な開発目標)がこれだけ言われるなかにあって、日本では武田邦彦氏や竹田恒泰氏のように、いまだに「地球は温暖化していない」と主張する論者がいて、国民を混乱に陥れていた。今回のIPCC報告書はこれにとどめを刺した格好であり、これで世論の流れも変わっていくものと期待している。記事は長いが、以下に全文を紹介しておく。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今月、産業革命以降の世界の平均気温の上昇幅が今後20年以内に1.5度に達するとの科学的予測を盛り込んだ報告書を公表した。世界各地で頻発する熱波や豪雨、干ばつの被害は、対策が遅れるほど拡大する。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の下で進む各国の脱炭素戦略は、一層の深化を求められている。(編集委員 佐藤淳、科学部 山波愛)

成果強調
IPCCが9日に発表したのは、1988年の設立以来、6回目の総合的な報告書になる。温暖化の科学的根拠を評価した今回の第1作業部会に続き、来年以降、温暖化が社会や生態系に与える影響を評価する第2作業部会、温暖化対策の選択肢をまとめる第3作業部会が順次、報告書を公表する予定だ。

人間の活動が地球温暖化を引き起こしているのかどうか。IPCCは今回初めて、「疑う余地がない」と断定し、30年以上続く論争に決着をつけた。第1作業部会のバレリー・マッソン・デルモット共同議長は、今回の報告書が温暖化の現状と見通しに関する「リアリティー・チェック」の役割を果たしたと述べ、成果を強調した。異常気象は世界各地で頻発している。今年6月以降、米西海岸とカナダ西部を熱波が襲い、その後、ドイツや中国は洪水、トルコやギリシャは山火事の被害に見舞われた。日本でも静岡県熱海市の土石流を始め、各地で豪雨災害が続く。

報告書によると、地球規模の観測が始まった1950年代以降、世界のほとんどの陸域で、熱波を含む極端な高温の頻度が増えたほか、多くの地域で大雨の頻度や強さが増加した。気温上昇が本格化する以前の1850~1900年に「10年に1回」しか起きなかった極端な高温は、現状では2.8回に増えている。過去10年に観測された一部の極端な高温については、「温暖化の影響なしに発生した可能性は非常に低い」と評価した。高温は温暖化が進むにつれ、さらに頻度が増す。産業革命以降の気温の上昇幅が1.5度になると4.1回、4度では9.4回(ほぼ毎年)に増えるとされた。

海面水位
海面水位の上昇に関しても、厳しい見通しが示された。グリーンランドを覆う氷床や氷河が解けたり、崩れたりして、今世紀いっぱい減り続けるのはほぼ確実で、南極大陸でも減り続ける可能性が高い。気温の上昇を1.5度前後に抑えても、今世紀末には、世界の平均海面水位の上昇が最大55センチ、2150年までには最大86センチに達する。海抜の低い 島嶼とうしょ 国や沿岸国には、国土の安全保障に関わる差し迫った数値となった。

氷床、氷河の減少や海面水位の上昇は、影響がゆっくり、長期にわたって表れる。IPCCは、こうした変化が100年から1000年の時間スケールで続く「不可逆」な現象になる可能性もあるとした。報告書の査読編集者を務めた国立環境研究所の木本昌秀理事長は、「現象の影響が大きい場合、起きる可能性が低いものを『想定外』とせず、備えなければいけないという視点に立った記述だ」と説明している。

10年前後で限界
パリ協定は産業革命以降の気温の上昇を2度未満、できれば1.5度にとどめる目標を掲げている。しかし、過去10年の平均ではすでに1.1度上昇している。報告書によると、19世紀後半以降に排出された二酸化炭素(CO2)は累計で2兆3900億トンに達する。約7割の確率で1.5度目標を達成するには、あと4000億トンしか排出できない。温暖化対策が強化されず、現状と同じ排出が続けばあと10年前後で限界に達する計算になる。

今後、気温はどの程度上昇するのか。報告書は、温室効果ガスの排出量に応じた五つの未来社会を想定し、今後の上昇幅を予測している。すべての想定で21~40年の間に1.5度に達するが、2050年頃に排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現する想定では、今世紀末に1.4度に戻る可能性も示された。

9日の記者会見で、国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は「真剣になる時だ。過去の過ちは繰り返せない」と述べ、10月31日に英国で始まる国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の成功に期待を寄せた。50年のカーボンニュートラルを宣言した国は、日本や米国、欧州先進国を含む120か国・地域以上に拡大しているが、最大排出国の中国に加え、インドやロシアのような主要排出国も足並みをそろえていない。

1.5度目標を達成する可能性は残されているものの、実現には世界全体の排出削減が欠かせない。COP26では、各国の削減目標の強化に向けた協議に加え、国際協力を通じた削減のルールについても話し合われる。日本は、欧米先進国とともに技術協力で途上国の削減を後押しするほか、大量排出を続ける新興国を巻き込んだ削減が進むよう、国際協議をリードする必要がある。


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