毎日新聞奈良版(2021.7.21付)に〈「纒向学」記念論集刊行へ 来年、研究センター設立10周年 桜井市、CF(クラウドファンディング)で寄付募る〉という記事が出ていた。記念論集を刊行するための費用450万円を「ふるさと納税」制度を活用したクラウドファンディングで募るという。オリジナルの返礼品も用意されているそうだ。ぜひご協力いただきたい。ご寄付は、こちらのサイト(ふるさとチョイス)から行っていただける。この記事の全文と、寺沢薫所長へのインタビュー記事の全文を以下に貼っておく。
邪馬台国の有力な候補地、纒向(まきむく)遺跡を調査・研究している桜井市纒向学研究センターは、2022年に迎える設立10周年の節目に合わせ、記念論集を刊行することを決めた。市は刊行費用に充てるため、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディング(CF)で寄付金を募っている。【姜弘修】
纒向遺跡は3世紀を中心とした大規模集落遺跡。東西約2キロ、南北約1・5キロと広大で、2009年にはJR巻向駅近くで「卑弥呼(ひみこ)の宮殿か」と注目された3世紀前半の大型建物跡が見つかった。発掘調査は20年度に200回に達し、21年には最初の調査から50年を迎えた。同センターは纒向遺跡の調査・研究、保存活用を担う機関として12年4月に設立。成果をまとめた「纒向学研究」を毎年刊行し、年2回の纒向学セミナーや、東京フォーラムを開催している。
設立10周年に向けて刊行を目指すのは、記念論集「纒向学の最前線」(仮題)と、これまでの計14回の纒向学セミナーを書籍化した「纒向学からの発信―纒向遺跡をめぐる古代社会」(同)。記念論集は第一線の研究者らが執筆し、700ページを想定している。
CFの目標金額は450万円で、募集は10月4日まで。寄付金額に応じ、記念論集▽所員と巡る纒向遺跡ツアー▽寄付者限定の纒向学セミナー▽木製仮面ストラップ――などオリジナルの返礼品を用意している。センターの担当者は「CFを通じ、積み上げてきたセンターの活動を広くアピールできる機会になれば」と話している。
ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の「ガバメントクラウドファンディング」のページで公開されているプロジェクトから申し込む。プロジェクト名は「ヤマト王権誕生の地から、最新の研究成果を大発信!」。問い合わせは同センター(0744・45・0590)。
「国」の始まり、発信続ける 寺沢薫所長インタビュー
桜井市纒向学研究センターが設立10周年を迎えるにあたり、「纒向学」の命名者でもある寺沢薫所長(70)にこれまでの成果や今後の課題を聞いた。【聞き手・姜弘修】
JR巻向駅近くの市有地(旧纒向小学校跡地)に計画していたガイダンス施設の整備が(財政的な事情で)先送りになったのは残念だが、それ以外の調査・研究面では、ほぼ100%の成果を上げてきたと思っている。
纒向遺跡は日本の国家史を考える上で極めて重要な遺跡。止めることなく調査と研究を続け、わかりやすく市民に伝えていくことが遺跡の保存と重要性をアピールする一番の方法だ。センターはそこに力点を置いており、10周年のけじめとして記念論集を総力を上げて作りたい。
ヤマト王権の最初の王宮が造られた場所だということは、この10年間で大方定着してきたと思う。特に(大型建物跡が出た)「第1次王宮」は、10年間でほぼ明らかにすることができた。第1次の次があるはずで、今度は3世紀後半の「第2次王宮」を探し、確定しないといけない。私の言い方では、ここは「日本最初の霞が関」で、個人的には各官庁のはしりみたいなものを見つけたい。各地から人々が出仕してきた「出張所」が集中していただろうと考えられ、点ではなくエリアとしてわかってくると面白い。
纒向遺跡から発信することは山ほどあるんだと、纒向学は小さな地域の名前が付いているけど、この国全体のことをアピールできる学問なんだと、次の10年で一般の中にも根付かせたい。
邪馬台国の有力な候補地、纒向(まきむく)遺跡を調査・研究している桜井市纒向学研究センターは、2022年に迎える設立10周年の節目に合わせ、記念論集を刊行することを決めた。市は刊行費用に充てるため、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディング(CF)で寄付金を募っている。【姜弘修】
纒向遺跡は3世紀を中心とした大規模集落遺跡。東西約2キロ、南北約1・5キロと広大で、2009年にはJR巻向駅近くで「卑弥呼(ひみこ)の宮殿か」と注目された3世紀前半の大型建物跡が見つかった。発掘調査は20年度に200回に達し、21年には最初の調査から50年を迎えた。同センターは纒向遺跡の調査・研究、保存活用を担う機関として12年4月に設立。成果をまとめた「纒向学研究」を毎年刊行し、年2回の纒向学セミナーや、東京フォーラムを開催している。
設立10周年に向けて刊行を目指すのは、記念論集「纒向学の最前線」(仮題)と、これまでの計14回の纒向学セミナーを書籍化した「纒向学からの発信―纒向遺跡をめぐる古代社会」(同)。記念論集は第一線の研究者らが執筆し、700ページを想定している。
CFの目標金額は450万円で、募集は10月4日まで。寄付金額に応じ、記念論集▽所員と巡る纒向遺跡ツアー▽寄付者限定の纒向学セミナー▽木製仮面ストラップ――などオリジナルの返礼品を用意している。センターの担当者は「CFを通じ、積み上げてきたセンターの活動を広くアピールできる機会になれば」と話している。
ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の「ガバメントクラウドファンディング」のページで公開されているプロジェクトから申し込む。プロジェクト名は「ヤマト王権誕生の地から、最新の研究成果を大発信!」。問い合わせは同センター(0744・45・0590)。
「国」の始まり、発信続ける 寺沢薫所長インタビュー
桜井市纒向学研究センターが設立10周年を迎えるにあたり、「纒向学」の命名者でもある寺沢薫所長(70)にこれまでの成果や今後の課題を聞いた。【聞き手・姜弘修】
JR巻向駅近くの市有地(旧纒向小学校跡地)に計画していたガイダンス施設の整備が(財政的な事情で)先送りになったのは残念だが、それ以外の調査・研究面では、ほぼ100%の成果を上げてきたと思っている。
纒向遺跡は日本の国家史を考える上で極めて重要な遺跡。止めることなく調査と研究を続け、わかりやすく市民に伝えていくことが遺跡の保存と重要性をアピールする一番の方法だ。センターはそこに力点を置いており、10周年のけじめとして記念論集を総力を上げて作りたい。
ヤマト王権の最初の王宮が造られた場所だということは、この10年間で大方定着してきたと思う。特に(大型建物跡が出た)「第1次王宮」は、10年間でほぼ明らかにすることができた。第1次の次があるはずで、今度は3世紀後半の「第2次王宮」を探し、確定しないといけない。私の言い方では、ここは「日本最初の霞が関」で、個人的には各官庁のはしりみたいなものを見つけたい。各地から人々が出仕してきた「出張所」が集中していただろうと考えられ、点ではなくエリアとしてわかってくると面白い。
纒向遺跡から発信することは山ほどあるんだと、纒向学は小さな地域の名前が付いているけど、この国全体のことをアピールできる学問なんだと、次の10年で一般の中にも根付かせたい。