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田中利典師の講演「生と死…修験道に学ぶ」より(8)自分の意思で、勝手に死んではいけない

2023年01月15日 | 田中利典師曰く
金峯山寺長臈(ちょうろう)田中利典師は、ご自身のFacebookに、ご講演「生と死…修験道に学ぶ」(第42回日本自殺予防学会総会 2018.9.22)の内容を10回に分けて連載された(2022.11.7~20)。心に響くとてもいいお話なので、私はこれを追っかけて当ブログで紹介している。
※トップ写真は、大和郡山市の椿寿庵で撮影(2008.3.15)

今回のタイトルは「日本人の自殺率は高い」。師は〈キリスト教徒は、自分の命は神様から、いわゆるヤハウェの神様から頂いたものであるので、自分で命を絶つということは神に逆らうことであるという倫理観があり、それによってキリスト教徒は自殺率が低い〉とお書きである。

確かにニーチェも、発狂して死んだと言われる(直接の死因は肺炎)。最初は不思議に思っていたが、「キリスト教徒は自殺できない」と知って、納得した。相田みつをの「アノネ、にんげんはね、自分の意思でこの世に生まれてきたわけじゃねえんだな。だからね、自分の意思で勝手に死んではいけねえんだよ」という言葉は身に染みる。では、利典師のFacebook(11/15付)から全文を抜粋する。

シリーズ「生と死…修験道に学ぶ」⑧「日本人の自殺率は高い」
さて、この自殺予防学会での講演の依頼を頂いて、何を話そうかと思っているときに、私はたまたま北陸の加賀に行き、相田みつをさんの記念展に遭遇しました。その相田さんの記念展で、この学会のテーマとリンクして、私の心にズンと入ってきた言葉がありました。

相田さんは素晴らしい言葉をたくさんお残しになっていますが、この学会でお話をすることに私は結構プレッシャーを感じていたので、よけい私の心に響いたのかもしれません。

それは「アノネ、にんげんはね、自分の意思でこの世に生まれてきたわけじゃねえんだな。だからね、自分の意思で勝手に死んではいけねえんだよ。」という言葉でした。その通りだな、と思いました。

でも、その通りだなと私は思いますが、世の中には思わない人はきっとたくさんいるのだろうな、ということも思いました。私の友人で正木晃さんという宗教学者がいますが、正木先生から聞いたお話なので、私が調べたわけではないことをお断りして、紹介をいたします。

世界における自殺率というものがあるそうですが、日本人は、キリスト教徒よりも圧倒的に自殺する人が多いと聞きました。なぜ日本人が多く、キリスト教徒の自殺は少ないのか。キリスト教も最近はずいぶん様子が変わってきているとも聞きますけれども、基本的にキリスト教徒は日本人と比べると自殺率が低い。

なぜなら、キリスト教徒は、自分の命は神様から、いわゆるヤハウェの神様から頂いたものであるので、自分で命を絶つということは神に逆らうことであるという倫理観があり、それによってキリスト教徒は自殺率が低いのだそうです。

それに対して、日本人はと言うと、相田さんがお書きになっているように自分の命は自分で勝手に生まれてきたのではなくて、頂いた命なのだというーこれは仏教の考えもあろうかと思いますし、そういう視点を持ちなさいということでありますが、といってキリスト教徒のような厳格なものが倫理観としてないのが日本ではなかろうか、というのです。

いや、自殺は日本人にとって、本当に悪いことなのでしょうか?江戸時代、自殺は美学でした。サムライたちは自分の命に代えて名誉を守ったり、主人に対する忠誠を誓いました。社会はそれを良しとした時代がついこの間まであったわけであります。

さらには、仏教では未だに自殺が続いております。中国による弾圧によってチベットではもう200名近い僧侶の方が焼身自殺で命を失っておられる。仏教では法華経などに説かれる焼身供養という考え方がありますが(『法華経』薬王菩薩本事品)、自分の身を焼いて仏に供養する行いがある。

そういう考え方の中で、チベットでは中国に対する抵抗のひとつとして、焼身自殺が未だに続けられている。こう考えると、決して自殺が悪いと言えない社会が実はあるのではないか。

じゃあ、どうするのだということでありますが、そんな中で私が言えることがあるとするなら、「繋がりの中で生きている」ということをもう一度見つめ直すところから始めましょうと思うわけです。

…毎日アップしようと思っているのですが、旅先では通信状況が悪く、また、今日から沖縄行きなので、あと少しなのに、しばらくおやすみになります。次のアップの19日までお待ちください。

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好評いただいている?私の著作振り返りシリーズの第4弾は、平成30年に開催された第42回日本自殺予防学会での特別講演「生と死…修験道に学ぶ」を、10回に短く分けて紹介させていただきます。もう4年前の講演ですが、なかなか頑張ってお話ししています。ご感想をお待ちしております。
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