tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

刀匠・河内国平氏の世界

2006年03月11日 | 日々是雑感
写真は、七支刀(しちしとう)の刀身である。七支刀は奈良県天理市の石上(いそのかみ)神宮から出土した古代の鉄剣で、「ななつさやのたち」とも呼ばれる。左右に3本ずつの枝刀が出ているのが特徴だ。

これを復元したのは刀匠(とうしょう)河内國平(かわち・くにひら)氏だ。氏は東吉野村にお住まいで、05年3月には「奈良県無形文化財保持者」に指定された。
※河内氏のサイトhttp://www.mugenkan.com/

東吉野村は、私も昨秋、お祭り見物で訪れたのだが、清流と杉の美林に囲まれ、歴史遺産に富む素晴らしい村だった。
※「噂の小川祭りに、感動した!」(インターネット新聞『JanJan』の記事)
http://www.janjan.jp/area/0510/0510234170/1.php?PHPSESSID=...

その河内氏の作品展が、奈良県立橿原考古学研究所付属博物館の「特別陳列」として催されている(2/25~3/26)。毎日曜日には、河内氏ご本人による解説も聞くことができる(午後1時から。3/19のみ10時30分から)。展示は河内氏の仕事現場の再現や制作された日本刀と、氏が中心となって関わってきた古代刀剣類の複製品の展示だ。
※参考(インターネット新聞『JanJan』の記事)http://www.janjan.jp/culture/0603/0603201078/1.php?PHPSESSID=beebedb14b00b2ef60f33f26a93f2ad9

意匠を凝らした「藤ノ木古墳出土飾り太刀」(同氏らの復元品)の豪華さ・きらびやかさには、圧倒された。今回のメインテーマは、七支刀復元のプロセスで、当初は鍛造(鉄を熱して槌で打つ)で復元されたものが、やはり鋳造(熱で溶かして鋳型にはめる)ではないかと再び工法を変えて作られたそうだ。その鍛造品が写真の向かって左端、鋳造品が右の2本だ。
※同博物館のサイトhttp://www.kashikoken.jp/museum/

1300年前の日本にタイムスリップしたようなこの特別展示。皆さんもぜひ訪れて、ご覧いただきたい。なおこの博物館は、古墳時代以降の出土品やその復元品などがたくさん展示されている素晴らしい博物館で、半日は楽しめる。
※参考「河内國平とその一門」(ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/d/20060526
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お水取りが終わると春が来る

2006年03月06日 | 日々是雑感
3月6日の今日は、啓蟄(けいちつ)。冬ごもりをしていた虫たちが、地中からはい出す時期だ。木々の芽が萌え出し、動植物の動きも活発になってくる。

今日の奈良盆地は、気温は高かったものの夕方から雨になった。二月堂へお松明を見に行かれた方は、濡れた石段やぬかるみに足を取られて、大変だったろう。

奈良では「お水取りが終わると春が来る」と言う。私も奈良に移り住んでからよくこの言い回しを耳にするようになったが、実際それを肌に感じる。これは単なる気分の問題なのかホントなのか、気象庁のデータを使って確かめてみた。

奈良の平均気温(平年)を並べてみよう。お水取りの前行は2月20日開始、お松明の上がる本行は3月1日~14日だ。お水取り期間中の気温と、その前後の気温とを比べてみる。
(当該期間中、日々の平均気温を合計し日数で割った)

2月01~19日 3.8℃
2月20~末日 4.6℃(前 行)
3月01~14日 6.0℃(お松明)
3月15~末日 8.3℃

お松明とその直後で2.3℃、お水取りの前後では4.5℃も気温が上昇していることが分かる。これに比べお水取り期間中(約1か月間)は1.4℃しか上がっていない。お水取り期間中は寒い日が続いていたのに、終わったとたん桜がぱあっと開花するように、いきなり2.3℃もハネ上がるから「春が来た」と実感するのだ。

これで、古くからの言い回しが客観的に立証できたぞ。
それにしても今夜は、電卓をたくさんたたいた夜だった…。

※写真は昨年4月に撮った二月堂。テンプレートを変えた(タイトル背景は明日香村稲渕)ので、それに合わせて写真サイズを小さくしてみたが…。
コメント (3)
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長浜のガラス工芸

2006年03月05日 | 日々是雑感
滋賀県長浜市は、黒壁の伝統的町並みとガラス工芸で知られる。そのシンボルが「黒壁ガラス館」(同市元浜町)だ。1900年(明治33年)に建てられた第百三十国立銀行(のち明治銀行)長浜支店の黒壁塗りの建物を使っている。

取り壊しが決まっていたこの建物は1989年(平成元年)、市民たちの力で、国内外のガラス製品を展示・販売する施設に生まれ変わった。以来これを中核施設として、周囲の古びた町屋(江戸~明治期の建築)が続々と再生し、現在の「黒壁スクエア」(北国街道の南北1.5km、約120軒)が誕生した。

街を歩いていると、至るところできれいなガラス工芸品を目にする。写真は、とある店のショーウインドーにあった逸品(3/4撮影)。「古い街並みに心解け、美しいガラス細工に心踊る長浜」というキャッチフレーズに、偽りはなかった。
コメント (2)
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お水取りに3つの誤解

2006年03月03日 | 奈良にこだわる
「お水取り」として知られる行事は、正確には「東大寺二月堂修二会(しゅにえ)」である。お寺のHPによると《東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)は、天平勝宝4年(752)、東大寺開山良弁僧正(ろうべんそうじょう)の高弟、実忠和尚(じっちゅうかしょう)によってはじめられたと伝えられます。以来一度も途絶えることなく続けられ、平成13年(2001)には1250回を数えました》。
http://www.todaiji.or.jp/index/hoyo/syunie-open.html

《この法会は、現在では3月1日より2週間にわたって行われていますが、もとは旧暦の2月1日から行われていましたので、二月に修する法会という意味をこめて「修二会」と呼ばれるようになりました。また二月堂の名もこのことに由来しています》。

《行中の3月12日深夜(13日の午前1時半頃)には、「お水取り」といって、若狭井(わかさい)という井戸から観音さまにお供えする「お香水(おこうずい)」を汲み上げる儀式が行われます。また、この行を勤める練行衆(れんぎょうしゅう)の道明かりとして、夜毎、大きな松明(たいまつ)に火がともされ、参集した人々をわかせます。このため「修二会」は「お水取り」・「お松明」とも呼ばれるようになりました》。

《12月16日(良弁僧正の命日)の朝、翌年の修二会を勤める練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれる11名の僧侶が発表され、明けて2月20日より別火(べっか)と呼ばれる前行が始まり、3月1日からの本行に備えます。そして3月1日から14日まで、二七ヶ日夜(二週間)の間、二月堂に於て修二会の本行が勤められます》。

《「修二会」の法要は、正しくは「十一面悔過(じゅういちめんけか)」といい、十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ)を本尊とし、「天下泰平(てんかたいへい)」「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」「万民快楽(ばんみんけらく)」などを願って祈りを捧げ、人々に代わって懺悔(さんげ)の行を勤めるものです。前行、本行をあわせてほぼ1ヶ月、準備期間を加えれば3ヶ月にも及ぶ大きな法要となります》。

さて、ここで一般的によく誤解されている3点を以下に列挙する。

[誤解その1]お松明は「行」である。
お松明は、二月堂へ上がる練行衆の足元を照らす「灯り」である(童子が練行衆のために松明をかざす)。この松明が次第に大きく派手になり、炎のパフォーマンスとなった。「お松明の火の粉をかぶれば、1年間健康で過ごせる」との言い伝えもあり、二月堂の真下で待ちかまえる観衆も多い。

[誤解その2]お水取り(お松明)は1日だけの行事である。
遠方の人で、このように誤解している人がいる。上記のとおり、お松明が上がる日だけでも14日間ある。誤解している人は「3月12日」がその日だと思っているようだ。12日には大きめの「籠(かご)松明」が11本上がり、マスコミでよく報道されるので生じた誤解である。

[誤解その3]お松明は、毎日1本ずつ増える。
3月1日は1本だけ、翌日が2本…、という誤解。正しくは、12日だけが11本、他の日は全て10本。これも12日の籠松明だけが過剰報道されて生じた誤解だろう。

これからお松明を見に行かれる方は、3月12日だけは避けなければならない。上記のように誤解している人がどっと押し寄せ(毎年2~3万人)、写真撮影はおろか立ち止まることも許されない。多くの警官が立つ間を通り抜けることになり、またこの日は境内の電灯が(危険防止のため)点灯したままなので、風情も損なわれている。雰囲気を味わうには、3月上旬に見るべきである。

私も早速見に行き、写真を撮ってきた。松明の後ろにいるお坊さん(練行衆の1人)を撮ろうとチャレンジしたが、結局写せなかった。

それにしても平日なのに人が多かったのには、驚いた。JR東海が関東圏で、お松明を撮った迫力映像のCMを流しているので、こんなに増えたのかも知れないが。



そうだとすれば、12日だけでなく他の土日も大混雑しそうなので、くれぐれもご注意いただきたい。
コメント (9)
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