tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

今西清兵衛商店で酒蔵見学

2010年02月21日 | 奈良にこだわる
「SNSけいはんな」という地域限定のSNS(mixiのような会員制のWebサービス)がある。「けいはんな地域SNS研究会」(代表:大阪市立大学大学院教授 藤田忍氏)が母体となって、07年にスタートした無料の会員制サービスである。私も一昨年からこのSNSのメンバーに入れてもらい、当ブログを「日記」に設定している。
※地域SNS「けいはんな」のご案内(PDF形式)
http://sns.keihanna-city.com/files/2008_03_09_01_annai.pdf

このSNSの2月オフ会が昨日(2/20)開かれた。今回は清酒春鹿醸造元、ならまちの株式会社今西清兵衛商店さん(奈良市福智院町24-1)をお訪ねした。案内して下さったのは、同社の亀村慎さんである。すでに幹事のFUTAN(ふうたん)さんが「日記」にこの日の様子をアップされているので、それを参照しつつ、以下に紹介させていただく。
※株式会社今西清兵衛商店のホームページ
http://www.harushika.com/



総勢12名で同社をお訪ねしたのは、午前10時。見学の前に、亀村さんのお話とビデオで、日本酒の歴史や酒造りの過程、お酒にまつわるエピソードなどを教えていただいた。面白かったのは「成人が飲むお酒100杯のうち、ドイツではビールが80杯、フランスではワインを60杯、日本では日本酒は7~8杯、ビールを30数杯、焼酎が12杯と、いろんな種類のお酒を飲んでいる」。


同社では、京都・松尾大社の酒の神様をお祀りしている

「ならまち周辺には20数軒の造り酒屋があり、そのうち10数軒が江戸にお酒を送っていた。江戸時代、菱垣廻船で江戸までは10日かかったが樽廻船ができて、これを5日に縮めた。そのため(港のある)灘の酒が江戸でトップシェアを占めた(奈良から江戸へは、馬で10数日かかった)」。様々な荷物を積む菱垣廻船と違い、樽廻船は酒樽専用だったので、積み降ろしの合理化によって、酸敗しやすいお酒をいち早く大消費地に届けることができたのだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%BD%E5%BB%BB%E8%88%B9


精米機。この中を酒米が何十時間も回り、精米されていく

「かつては岩手県から、杜氏(とうじ)や蔵人(くらびと)を賄い付きで招いていたが、最近は杜氏(=長)だけを招き、同社の社員が蔵人となってお酒を造っている」「酒造りの大部分は機械化されているが、肝心要の過程は杜氏と蔵人に委ねられている」。


精米されていく米粒を現物で拝見

山田錦などの酒米は、食べる米と違って粒が大きい。しかし、あまり旨味はないそうだ(純粋な澱粉に近い)。精米で米の外側を削る(削って出るヌカは、捨てることなく他の用途に再利用されている。一部は鹿せんべいの材料として、奈良の鹿愛護会に寄贈されている)。お酒の種類によって精米の度合いが違い、大吟醸だと50%を下回る。 


連続蒸米機。コンベアで運ばれる米を下から蒸し上げる。お酒によっては甑(こしき)を使用する  

メンバーのichiroさんが春鹿さんに進呈したコピー。《春鹿は「春しか」飲めない酒ではありません。夏には、友と「なつ」かしく飲めます。秋には、夜長を「あき」ずに飲めます。冬には、炬燵に入り皆で「ふゆう」(富裕)な気持ちで飲めますよ》。  


足元にはタンクがずらりと並ぶ。昔はすべて木樽だったが、今は金属やプラスチックだ


木樽の中で発酵が進む。このお酒は濃厚な味の「樽仕込み」として販売される  

見学のあとは、お待ちかねの試飲。試飲用のぐい飲みは、底に白と紺の丸い縞模様が入っている。白い部分でお酒が黄色くなってないか、紺の部分で白濁していないかを見るのだそうだ。いただいたお酒は、以下の5種類だ。春鹿は辛口というイメージだが、辛口にもいろんなバリエーションがあることがよく分かった。このほか、蔵人が作られた甘酒やつまみの奈良漬もいただいた。

1.純米 超辛口
2.純米吟醸 生酒 しぼりばな
3.旨口四段仕込 ・純米酒
4.平城京遷都1300年記念・せんとくんのお酒
5.純米大吟醸

 

私のイチ押し「2.純米吟醸 生酒 しぼりばな」1365円(720ml)
http://www.harushika.com/cargo/cargo.cgi?Category=season#

見学と試飲、それにぐい飲みもいただいて、わずか500円!だった。お土産にお酒を買わせていただいたが、申し訳ない気持ちで一杯である。これからも春鹿を愛飲することにしたい。ご案内いただいた亀村さん、有り難うございました。


会社の前で記念撮影

試飲の後は、もちいどのセンター街の「山口水産」で昼食。1000円の予算(飲み物は別)で、刺身や魚フライなどをたっぷりいただいた。「朝からお酒をいただいて、正月みたいだな」と、話も弾む。
※海鮮居酒屋「山口水産」(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/d28beefb19d347c72d9f0ba608b66de6





それにしても楽しいオフ会だった。今回は12人の参加だったが、SNSけいはんなの会員は、全部で280人いらっしゃるそうだ。「けいはんな市民雑学大学」も、このSNSから誕生した企画である。私はあまり頻繁には顔出しできていないが、日程が合えば、これからも参加させていただきたいと思う。
※私が講師となった雑学大学(当ブログ内)。春鹿さんから差し入れをいただいた
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/6c95f6153140353e7b394a648d963565

お世話いただいたFUTANさん、有り難うございました。これからも、どうぞよろしく。
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家風 いかるがの里

2010年02月19日 | グルメガイド
会社の上司から、「大和郡山市の『家風 いかるがの里』が美味しいよ」と教えてもらった。場所は城回り線の沿道で、「廣東料理 冠山酒家」のすぐ近くである。
http://gourmet.walkerplus.com/162081092001/

奈良県ビジターズビューローの「三ツ星グルメ」には《食材のレベルの高さと技の繊細さに定評のある日本料理店、たとえば、魚はすべて天然物を使用、刺身や焼き、熟成など、どの調理法が最適かを見極めて調理。窯元に足を運んで買い集めた作家物の器も、料理の魅力を引き出してくれる。大ぶりの籠の中にお造りや天ぷらなどがぎっしりと並ぶ花籠御膳2,500円(要予約)のほか、お造り御膳1,500円など》とある。
※三ツ星グルメ(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/804d341b856bf095e707220092a325d2



出張帰りのお昼どきに、会社の先輩たちと訪ねてみると、お店は奥さん連中でほぼ満席だった。皆さん、美味しい店をよくご存じである。私が注文したのはすぐ上の写真の「ささ身しそ巻きフライ・コロッケ」(本日の日替わり定食)750円である。トップ写真の「お造り御膳」1500円はN先輩、下の写真の「穴子丼」(本日の日替わり定食)750円はS先輩が注文したものである。



さっくり・カラリと揚がったフライだった。手作り豆腐もぶっかけうどんもイケる。お造り御膳も穴子丼も、とても美味しかったそうだ。周囲の奥さんたちを見回すと、たいてい「天ぷら御膳」1500円かお造り御膳を食べている。ランチメニューには他にも「大和肉鶏竜田揚げ御膳」1800円、「活うなぎ御膳」1800円、「檜わっぱ弁当」2000円などがある。

また別の日に訪ね、今度は「メヌケ味噌漬け焼き」(本日の日替わり定食)750円を注文した。いい具合に漬かったメヌケがあっさりと焼けている。帰り際にはもう「売り切れ」となっていたので、人気メニューなのだろう。



このお店は食材の良さはもちろんだが、丁寧に調理されているのがよく分かる。ま新しい店内の雰囲気も良いし、器も凝っている。小座敷が掘りごたつ式になっているのも有り難い。夜のメニューには、大和肉鶏山椒焼き750円、お造り2種盛り2500円、おまかせコース5250円はじめ、「お料理メニュー70種、ドリンクメニュー50種取り揃えております」とある。
※「じゃらん観光ガイド」の同店紹介情報
http://www.jalan.net/ou/oup2000/ouw2001.do?spotId=guide000000165493

この店は、ランチだけで済ますのはもったいない。今度は夜に、本格的な日本料理をじっくりと味わうことにしたい。本当に良い店を教えてもらったものだ。皆さんも、ぜひお訪ねいただきたい。
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これはうまい!ヒサゴ屋の肉うどん

2010年02月17日 | グルメガイド
「tetsudaさん、ヒサゴ屋の肉うどんは絶品ですよ」と、旧知のTさんからお聞きした。Tさんは、以前当ブログで紹介したこのお店に行かれ、肉うどんが美味しいことを発見されたそうだ。
※ならまちで昼食を(7)ヒサゴ屋(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/3814c25391a6df49c601b7df32551fc1

Tさんは私と同じ関西生まれの関西育ちだから、うどんの好みも似ているはずだ。エッジの立った讃岐うどんではなく、ソフトな食感のうどん、ツユは昆布と削り節の効いたあっさり醤油味、牛肉はさらりと甘辛く煮て…、とおおよその見当はつく。で、早速訪れてみた。

トップ写真が、肉うどん600円である。私はこれに小ライス150円(漬物と梅干つき)を合わせた。まずツユをひと口。これはうまい!昔懐かしい、イメージどおりの肉うどんである。うどんは予想よりやや太めで、もっちり感が良い。たっぷり入った脇役のネギが良い味を出しているし、何より肉が美味しい。

吉本新喜劇の花紀京(父は横山エンタツ)は、うどん屋で「肉うどんのうどん抜き」(肉吸い)を注文したそうだが、それは、こんな味だったのではないだろうか。
http://www.circleksunkus.jp/campaign/nikusui/index.html

Wikipedia「うどん」によると《肉うどん 醤油で味付けして煮た牛肉、鶏肉、豚肉、また地方によっては馬肉を具にしたうどん。肉はおおむね甘辛く煮付けている》と、肉は牛肉に限らず、地方によっては馬肉まで使うようだが、関西人にはやはり牛肉だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%A9%E3%82%93



同サイトには《関西のうどん 「おうどん」と呼ぶことが多い。麺は柔らな食感でコシがないと表現される。これは出汁がからみやすく、また出汁を吸いやすいようにとの工夫である。出汁は、昆布と削り節(鰹節、鯖節など)をベースに、炒り子(うるめいわしなど)、椎茸、エビなどを合わせるなど、各店で工夫が凝らされる。京都と比べると、魚介出汁は強めで、様々な隠し味を使い、複雑な味わいに仕上げるなど、同じ関西でも地域によって微妙に出汁の違いがあるが、吸い物のように飲み干せるように仕上げられている。また、ごはんや寿司(巻き寿司、押し寿司、ちらしなど)と共に食することも多い》と、うまく特徴を突いている。

うどん玉を大徳食品の奈良うどん(県産きぬいろはを100%使用)、牛肉を大和牛(やまとうし)のコマ切れ、ネギを結崎(ゆうざき)ネブカとし、そこに飛鳥古代米のおにぎりと奈良漬(またはめはり寿司)をあわせると、立派な「あをによし奈良の都の肉うどん定食」が出来上がる。どなたか、1300年記念に商品化していただけないものだろうか。

久しぶりに、うどんツユを底まで飲み干してしまった。この「おうどん」は、ご近所の蔵武Sさんにも、ぜひお薦めしたい。
Tさん、身も心も温まる情報、有り難うございました。
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同時進行!平城遷都1300年(16)「訪れたい」堂々の1位

2010年02月14日 | 平城遷都1300年祭
1/25、旅行のクチコミサイト「フォートラベル」は、同サイト上で「2010年 訪れてみたい、国内外のイベント&トピック」と題するアンケート調査を実施した(実施期間:09年12月23日~10年1月4日)。同社のプレスリリースによると《本調査では、2010年に開催されるイベントや注目のトピックをフォートラベルにて予め選定し、その中からもっとも訪れてみたいイベント&トピックを国内・海外それぞれから、一つ選ぶ方法を採択。1096名の回答を得ることができました》。
http://4travel.jp/aboutus/pressroom/press/20100125_press.html

国内イベントに「訪れてみたい」は53.5%、「興味が無い」は46.5%。「訪れてみたい」という人に聞いた国内イベントのベスト5は、

1位 平城遷都1300年祭 41.6%
2位 NHK大河ドラマ「龍馬伝」の舞台(高知県・長崎県)21.0%
3位 平成の大改修に入る姫路城(兵庫県)14.2%
4位 瀬戸内国際芸術祭(香川県・岡山県)11.1%
5位 名古屋開府400年祭(愛知県)9.9%
6位 その他 2.2%

と、わが平城遷都1300年祭が、あの福山雅治の龍馬に20ポイントもの差をつけてダントツだったのだ!


平城宮跡・朱雀門(すざくもん)。09.9.17撮影

なお海外イベントでは「訪れてみたい」人が全体の52.3%。行き先別では、1位が「上海万国博覧会(中国)」(26.7%)、2位「バンクーバーオリンピック(カナダ)」、3位「2010 FIFAワールドカップ(南アフリカ)」、4位「天文イベント(アフリカ、インド金環食、日食など)」、5位「FIFA クラブワールドカップ(アラブ首長国連邦)」という結果であった。

私は、ほっと胸をなで下ろした。何しろ昨年9月に財団法人南都経済センターが実施した調査では、1300年祭に「行く(行く予定である)」は、近畿圏で5.8%、首都圏では1.0%にとどまっていたからだ。「行きたいと思っている」も、近畿圏で26.9%、首都圏では19.0%というお寒い状況だった。
※同センターのホームページ。月報バックナンバーの「特集」(09年11月号)ご参照のこと
http://www.nantoeri.or.jp/geppou/backno.html

新聞各紙は、この調査結果を競って報道した。わざわざ開幕直前の夕刊1面トップで「遷都1300年祭、浸透せんと!元日開幕、低い知名度」と報じた新聞もあった。
http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK200912100067.html


平城(なら)遷都祭2008。08.5.3撮影(トップおよび下の写真とも)

しかし今回のアンケート結果は、私が調べた限りでは観光経済新聞(2/6付)が報じているだけだ。同紙は《訪問したいイベント、「平城遷都」が1位に》という見出しで《平城遷都1300年祭(奈良県)は、何らかの国内イベントを訪れたいという人の41.6%の支持を集め、2位に約20ポイントの差をつけて1位に。公式マスコットキャラクター「せんとくん」の活躍などによる注目の高さが際立つ結果となった》等々と報じた。

フォートラベル社は、1/25にプレスリリース(広報資料)を公表している。それを記事にしたのは週刊の業界紙だけで、日刊紙は気にも止めていない。私のようなアマチュアでも、ネット検索をしているだけで気がついたというのに…。報道の中立・公平をいうなら、こういう「プラス側面」のアンケート結果も報じるべきだろう。「遷都1300年祭、報道せんと!大極殿落成控え、人気ダントツ」ではないか。
※1/26には「2ちゃんねる」にスレッドが立った。《「平城遷都1300年祭」は一度はいってみたいなあ》というコメントも入っている。
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/femnewsplus/1264478501/l50



平城遷都1300年祭は、大晦日のカウントダウンから始まっている。「祈りの回廊 秘宝秘仏特別開帳」など1300年記念事業協会の共催事業や「ならスイーツコンテスト」などの関連イベント、「なら瑠璃絵」などの新企画も目白押しである。
※祈りの回廊 秘宝秘仏特別開帳(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/e26ec7b308d885c45f573b7d2db148fe
※ならスイーツコンテスト(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/e57acf0d421ecc141d456dacc921c707
※なら瑠璃絵(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/210c67d079a28d62ce831cf45906f1c9

ともあれ、ここへきて国内イベントで支持率1位とは、とても有り難いことだ。これからは東大寺二月堂の修二会(お水取り)も始まる。まだまだ寒い日が続くが、ぜひ冬の奈良に足をお運びいただきたい。
※お水取り・3つの誤解(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/c9d4c3a20bd5d25e19e662fd015f0388
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大和のツバキは椿寿庵

2010年02月13日 | 写真
先週の土曜日(2/6)、大和郡山市の椿寿庵(ちんじゅあん)を訪ねた。早くも、可憐なツバキが咲き始めていた。
※椿寿庵(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/acf1ada2fb927678c95c27a7fc0bd61d

ここは西畑さんという方のご自宅で、敷地内にビニールハウスの椿園がある。その中で1月下旬から4月下旬、1000種・6000本の椿が咲くのである(見頃のピークは、2月下旬~3月にかけて)。入場は無料で、鉢植えの即売もされている。
http://tmnabe.hp.infoseek.co.jp/home/tuba.htm





Wikipedia「ツバキ」に、ツバキにまつわる詳しい話が載っている。《花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られたが、特に近世に茶花として好まれ多くの園芸品種が作られた。美術や音楽の作品にもしばしば取り上げられている》《和名の「つばき」は、厚葉樹(あつばき)、または艶葉樹(つやばき)が訛った物とされている》。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%83%90%E3%82%AD

《ツバキの花は花弁が個々に散るのではなく、多くは花弁が基部でつながっていて萼を残して丸ごと落ちる。それが首が落ちる様子を連想させるために入院している人間などのお見舞いに持っていくことはタブーとされている。この様は古来より落椿とも表現され、俳句においては春の季語である。なお「五色八重散椿」のように、ヤブツバキ系でありながら花弁がばらばらに散る園芸品種もある》。





《武士はその首が落ちる様子に似ているというのを理由にツバキを嫌った、という話もあるがそれは幕末から明治時代以降の流言であり、むしろ潔しとした。実際には江戸時代には大々的に品種改良が進められていたというのが真相である。1600年代初頭には多数の園芸品種が流行。1681年には,世界で初めて椿園芸品種を解説した書物が当時の江戸で出版される》。

《歴史的な背景として、日本では733年「出雲風土記」にすでに椿が用いられている。その他、多くの日本の古文献に出てくる。中国では隋の王朝の第2 代皇帝、煬帝(ようだい)の詩の中で椿が「海榴」もしくは「海石榴」として出てくる。海という言葉からもわかるように海を越えてきたもの、日本からきたものを意味していると考えられる。しかしながら、海石榴と呼ばれた植物が本当に椿であったのかは国際的には認められていない》。





《ツバキの花は古来から日本人に愛され、京都の龍安寺には室町時代のツバキが残っている。他家受粉で結実するために変種が生じやすいことから、古くから品種改良が行われてきた。江戸時代には江戸の将軍や肥後、加賀などの大名、京都の公家などが園芸を好んだことから、庶民の間でも大いに流行し、たくさんの品種が作られた》。



《茶道でも大変珍重されており、冬場の炉の季節は茶席が椿一色となることから「茶花の女王」の異名を持つ。また西洋に伝来すると、冬にでも常緑で日陰でも花を咲かせる性質が好まれ、大変な人気となり、西洋の美意識に基づいた豪華な花をつける品種が作られた》。

《江戸のツバキ 徳川幕府が開かれると、江戸に多くの神社、寺院、武家屋敷が建設された。それにともない、多くの庭園が営まれ、ツバキも植栽されていった。ことに徳川秀忠が吹上御殿に花畑を作り多くのツバキを含む名花を献上させた。これが江戸ツバキの発祥といわれる。『武家深秘録』の慶長18年には「将軍秀忠花癖あり名花を諸国に徴し、これを後吹上花壇に栽(う)えて愛玩す。此頃より山茶(ツバキ)流行し数多の珍種をだす」とある。権力者の庇護をうけて、ツバキは武士、町人に愛されるようになった。江戸ツバキは花形、花色が豊富で、洗練された美しさをもつ》。





《上方のツバキ 古来、都がおかれたツバキも古くから愛玩されてきた。ことに江戸期には徳川秀忠の娘東福門院和子を中宮として迎えた後水尾天皇や誓願寺の安楽庵策伝などの文化人がツバキを蒐集した。寛永7年(1630年)には安楽庵策伝によって「百椿集」を著した。さらに寛永11には烏丸光広によって「椿花図譜」が著され、そこには619種のツバキが紹介されている。現在でも京都周辺の寺社仏閣には銘椿が多い。上方のツバキは変異の多いユキツバキが北陸から導入されたことと、京都、大坂の人々の独自の審美眼によって選抜されたことに特色がある》。





故入江泰吉氏は《”花は究極の美” といわれる。その美は純粋であるが故に、誰れの目にも美しいと感じられ、心にやすらぎがもたされる》《花のいのちは短いものである。”人見るもよし 見ざるもよし されどわれは咲くなり”と、短い命の限り精一杯けなげに咲くからこそ美しく、映えるのではなかろうか》(『万葉四季の花』)と書かれた。私も、「究極の美」を短い時間のうちに凝縮させた花々に、何だか陶然となって夢中でシャッターを切った。

大和三名椿(やまとさんめいちん)とは、「白毫寺の五色(ごしき)椿」「伝香寺の散り椿(武士[もののふ]椿とも)」「東大寺開山堂の糊こぼし」であるが、椿寿庵にはその3つが揃っているそうだ。ツバキの見頃はこれからである。ぜひ、お訪ねいただきたい。
http://jafnavi.jp/web/r5/291110400.html

※椿寿庵
所在地 〒639-1027 奈良県大和郡山市池ノ内町556 TEL 0743-52-6126
交通アクセス 近鉄郡山駅から法隆寺行バスで10分。「池ノ内」バス停からすぐ
入場料 無料
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