梅雨末期の大雨の夕暮れ、庭で仰向けにもがいているセミの幼虫を見つけた。幼虫は雨に洗われたせいかきれいで、ろうのような不思議な白い色をしていた。近くの固い地面にはドリルで開けたような丸い穴を見つけた。
注意して探すとセミの抜け殻があちこちに見つかった。抜け殻をルーペで丹念に観察すると、頭部の複眼、触覚、細長い口がとても神秘的に見えた。前脚の先端の一ミリほどの針のような爪が、ライラックの葉を力強く貫いていた。
アブラゼミは八年目に地上に出てくるというが、暗闇の中ではどんな音を聞いていたのであろうか。そして暗い穴を抜け出たとき、不自由な殻を破ったとき、セミはどんな気持であったろうか。ファーブルも研究の合間にそんなセミの心理を考えたろうか。
昨日東北地方の梅雨明け宣言があった。つい3日前に初鳴きを聞いたミンミンゼミが、本格的な夏の日差しに一段と強く鳴き始めた。
セミのわずか数日の命を思うと夏らしい暑さが欲しいと思った。