エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

自然の中のビオトープ

2006-08-25 | 環境問題
              【霧ヶ峰八島ヶ原湿原】 

この夏、妻の里信州へ帰省の折、美しいマツムシソウが咲き乱れる車山高原を散策した。そこで、ホテルのマガジンの「車山高原ビオトープ誕生」というタイトル記事を目にした。大自然の中でのビオトープとは?と奇異に感じて記事を読んだ。駐車場のコンクリートを剥がして、今まで水路に捨てていた山の湧き水で湿原をつくったとあった。かつて自然を破壊してつくった空間を、今自然に帰そうという構想にとても感心した。
そのマガジンには「自然は本来あるがままに放置することではなく、自然との接点をつくることが大切」と書かれていたが、それがビオトープの原点なのだろうと思った。

 ビオ(生き物)のトープ(住むところ)という意味のドイツの自然思想であるが、十年ほど前から話題になり、学校や公園、公共施設等でビオトープ化が広まった。 意味からすると、実は当たり前の身近な自然そのものがビオトープなのだが、失われた自然を取り戻すためのビオトープの復元は、あらためて都市部の乏しい自然環境の現状を物語っているようで、切ない気持ちになる。 幸いまだまだ豊かな自然にめぐまれた地域は多いが、このビオトープは別の視点からの反省を促しているように思われる。私たちはこの身近にある貴重な自然環境を、もっと野生生物を見つめる視点から捉え利用するべきではないだろうか。それが自然保護の理念そのものだろう。
 たしかに学校敷地などではさらなる植樹が必要かも知れない。また除草剤の使用を避ければ、植物が虫たちを呼ぶだろう。小さくても自然の生態系を大切にするビオトープ的発想から子どもたちの自然保護の思想が養われるはずだ。

帰路、戸隠の森林植物園に立ち寄った。入り口近くの「もりのまなびや学習館」は森や自然を楽しく学べる、すばらしい工夫がされ、広い公園は、すばらしい自然の接点そのもので、理想のビオトープであることを再認識した。