都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖
都月満夫の短編小説集
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」>
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」
蝦蟇(がま)の油売りの口上によれば、四六の蝦蟇(しろくのがま)を四面鏡張りの箱にと閉じ込めて、四方に映る自分の姿に驚いた蝦蟇がタラリタラリと流す汗を集めて作るということになっています。しかし、いくら悠長な時代でもそんな手の込んだことをするわけがありません。
が‐ま【蝦蟇/蟇】
《古くは「かま」》ヒキガエルの俗称。《季 夏》
大辞泉
実は蝦蟇蛙は、目の後に「耳腺」という粘液を分泌する腺を持っています。この「耳腺」から出る粘液は、学名を「ブホタリン」、「ブホテニン」という毒性を含んだ液なのです。これを集めて豚の脂と混ぜ、軟膏状にしたのが「ガマの油」だそうです。
毒液といっても、毒と薬は紙一重。使い方によっては、それなりの薬効があったのかもしれません。
「ブホタリン」:蟾酥(せんそ:いわゆるガマの油)に含まれる毒性物質。心臓の拍動を強める作用があるため、心不全治療薬として使われた。健常者が摂取した場合には動悸を起こす。
「ブホテニン」:蟾酥(やっぱりガマの油)に含まれる毒性物質。幻覚作用を持つ。また発ガン性が確認されている。
勿論、現在では、薬事法という規制がありますので、「蝦蟇の油」を薬として売ることは出来ません。また、刀を持っていますので、銃刀法違反のおそれもあります。「蝦蟇の油売り」がいなくなったのも納得がいくというものです。
因みに、「四六の蝦蟇」とは、前足の指が4本、後ろ足の指が6本の蝦蟇蛙のことです。「蝦蟇の油売り」の口上では、特別な種類の蝦蟇蛙のように言いますが、そんなことはありません。たいていの蝦蟇蛙の足はそうなっているのです。
四六のガマ(しろくのガマ)とは、前足が4本指、後足が6本指のニホンヒキガエル(ガマ)のことである。
ニホンヒキガエルも基本的には前足後足ともに五本指だが、前足の第一指(親指)にあたるものは、痕跡的な骨があるだけでパッと見は四本に見える。また後足では、第一指のそばに番外指と呼ばれるこれも内部に骨のある瘤(こぶ)があるので、六本指に見える。
筑波山ガマ口上保存会によれば、「筑波山名物・ガマの油売り」口上は、200余年前、常陸国筑波郡筑波山麓出身の永井兵助が、故郷の薬「ガマの油」で一旗揚げようと売り口上を考案し、江戸・浅草の縁日の大道で披露したのが始まりとされる。ガマの油として売られていたもの自体は、いかなる薬かは不明であるが、蝋などを基剤にしニホンヒキガエルやムカデなどを煮詰めてつくられたという説、馬の脂肪から抽出した油(馬油)とする説もあるが、偽薬も含めて真相は不明である。
ウィキペディア
「蝦蟇の油売り口上」
油売りの様子を紹介すると絣(かすり)、袴に白襷、ほう歯に白鉢巻といういでたちの大男で、長さ三尺の太刀を腰にたばさみ、大音声をはりあげて・・・。
「~さあさお立ち会い。ご用とお急ぎでない方はゆっくりと聞いておいで。遠出の山越し笠のうち、聞かざるときは物の黒白、善悪がとんとわからない。山寺の鐘がゴオーン、ゴオーンと鳴るといえども、童子きたって鐘に撞木を与えずば、とんと鐘の音色がわからない。さてお立ち会い。手前ここに取り出したるは陣中膏蝦蟇の油。
~さーて、お立ち会い。蝦蟇と言ってもただの蝦蟇とは蝦蟇が違う。関東は筑波山の麓、おんばこという露草を食って育った四六の蝦蟇だ。四六五六はどこで見分ける。前足の指が四本、うしろ足の指が六本、これを称して四六の蝦蟇だ、お立会い。
山中ふかく分け入って捕らえたこの蝦蟇を、四角四面ギヤマン(鏡)の箱に入れると、ガマは鏡に写る己の姿の醜さを見て吃驚仰天、タラーリ、タラーリと脂汗を流す。これをすき取り、柳の小枝で三七、二十と一日トローリ、トローリと煮詰めましたるがこの陣中膏蝦蟇の油。蝦蟇の油の効能は、ひびにあかぎれ、しもやけの妙薬。・・・まだある。出痔、いぼ痔、はしり痔、はれもの一切、そればかりか刃物の切れ味も止める。
~取り出したるは夏なお寒き氷の刃!一枚の紙が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚、八枚が十六枚、十六枚が三十と二枚、三十二枚が六十四枚、六十四枚が一束(百)と二十八枚。これこの通り、フウッと散らせば比良の暮雪は雪降りの型。
~これなる名刀も、ひとたびこの蝦蟇の油をつけたるときは、たちまち切れ味が止まる。押しても引いても切れはせぬ。さあどうだ・・・。と言うても、なまくらになったのではないぞ、お立ち会 い!このようにきれいにふき取るときは、もとの切れ味になって、これこのとおり、拙者の腕から赤い血がしたたる。慌てちゃいけない、お立会い。この傷口に、蝦蟇の油を塗れば、さあどうだ。血はぴたり止まる。
~さてお立ち会い。蝦蟇の油の効能が分かったら遠慮はご無用。どんどん買っておくれ。急がなくても沢山あるから、並んで、並んで・・・・・・」
これが、落語になるといささか話が違ってきます。
刀の切り傷から血がしたたっています。が・・・、がまの油を塗っても血が止まらない。慌てた蝦蟇の油売り、「~お立会いの中に、どなたかよく効く傷薬を持っている方は居らぬか・・・」
お後がよろしいようで・・・。
したっけ。