「第二次世界大戦後に行方不明になっていた元日本陸軍兵士、上野石之助さん(83)が親族と六十三年ぶりに再会を果たした。」
数日前、新聞に報じられていた。弟と抱き合って再会を喜ぶ上野さんの写真も載っていた。 高齢の兄弟、幸せな再会だったに違いない・・・。
不幸な再会もある・・・。 『砂の器』『ゼロの焦点』共に松本清張の代表作。砂の器の和賀英良、ゼロの焦点の室田佐知子は、ともに決して人に知られてはならない過去を持っている。
和賀は子供のころハンセン病の父親とともに故郷を離れ放浪の旅を続けていたし、佐和子は終戦直後の立川で米兵相手に身を売っていたのだ・・・。ふたりとも、過去を秘めつつ、現在は名声を得て生活している。 突然自分の過去を知る人物が目の前に現れる・・・そう、「過去との遭遇」。
殺人をしてまでふたりは自分の過去を隠す。 先の新聞記事で遥か昔の読書の記憶が甦った。中学2年のときにカッパ・ノベルスで初めて読んだ清張作品が『砂の器』だった。