透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

街並みに秩序を与える小旗

2013-01-05 | B 繰り返しの美学



■ 新しい年を迎え、松本駅前からあがたの森に至る大通り(あがたの森通り)では街灯の腕木に頌春という小旗と日の丸が掛けられている。

ふたつの小旗が大通りに添って等間隔に続く。バラバラなデザインのファサードが続く通りが秩序づけられて、♪リズムうきうき 心ずきずき わくわく と、かなり古いが東京ブギウギ的な気分になんとなく なるから不思議。

同じものを直線状に繰り返すという単純なルールによって秩序づけられた光景は美しい。そう、これは「繰り返しの美学」による効果だ(と決めつけてしまう)。

温泉街であれば、通りに面する旅館の軒下に同じデザインの提灯(ちょうちん)を吊り下げるのもいいのではないかと前々から思っている。夜、提灯の灯りが点々と続く道を街中の公衆温泉まで歩いていく・・・。風情のある光景が目に浮かぶ。

このような場合、小旗や提灯は通りに秩序を与えるストリート・ファーニチャ、装置だ。

バラバラなファサードが続く街並みに繰り返しの美学を!秩序を!


過去ログ1

過去ログ2



 


「福岡ハカセの本棚」

2013-01-05 | A 読書日記



 ロンドンオリンピックの名言「康介さんを手ぶらで帰らせるわけにはいかない」に倣って「本を1冊も読まずに正月を終わらせるわけにはいかない」と書いておく。

昨日(4日)、松本市内の書店で『福岡ハカセの本棚』福岡伸一/メディアファクトリー新書を手にして目次を見た。第3章が「生き物としての建築」となっていた。他の章も例えば第1章が「自分の地図をつくる マップラバーの誕生」、第2章「世界をグリッドでとらえる」など興味深い内容だ。で、買い求めてスタバで一気読みした。

福岡さんおすすめの本100冊の紹介。読書の履歴と共に福岡さんの半生が語られている。「マップラバー」から「マップヘイター」へと転身していく過程でどのような本を読んだのか、という大変興味深い内容。

巻末に2011年5月14日から2012年3月18日までジュンク堂書店池袋店で開催された推薦書フェア「動的書房」のために著者が選んだ約400点のリストが載っている。

大人が読んでも楽しい本  0冊/8冊
ドリトル先生の世界を知る本  1/29
センス・オブ・ワンダー  3/14
いのちを旅する本  3/12
光の粒たち―フェルメールの世界  3/16
建築もアートも「流れて」いるから生きている  4/20
生物の世界  3/28
読み継がれるべき科学の本文学の持つ力 3/23
文学の持つ力 4/24
食べることは、生きること―食にまつわる本 2/16
福岡ハカセの好きな女性 8/33 
福岡ハカセが対談した方々 2/18
知の道標(みちしるべ) 1/16
福岡ハカセの書評・推薦本 3/53
福岡ハカセのインタビュー・寄稿・講演録掲載本 0/6 
本書で新たに取り上げた本 8/51
福岡ハカセの著作・翻訳本 5/26

以上の分類項目によって福岡さんは専門の生物学に関する本や小説はもちろん、理系、文系を問わずあらゆるジャンルの本を紹介している。リストにある本で私が読んだのは53点、少ないか・・・。


*『偶然と必然』はタイトル他表紙の文字が斜めにレイアウトされている。

福岡さんは**『偶然と必然』は、私の学生時代、必読書の一つでした。それはダーウィンの進化論のエッセンスだけを偶然と必然という概念から語り直したもので、いま読み返せば、ダーウィニズムのメカニズムをあまりにも単純化しているように見えます。しかし、当時はこうした切れ味のよさがなんとも格好よく、私たちもすっかりそれに魅了されていたのです。**(113、4)と紹介している。

『利己的な遺伝子』でリチャード・ドーキンスが示した「生物とは遺伝子の乗り物にすぎない」という考え方は有名。


『生物の世界』 今西錦司/講談社文庫 U1のゴム印と購入日 なつかしい!

 

『アンドロメダ病原体』マイクル・クライトン/ハヤカワ文庫 マイクル・クライトンの作品を科学少年をノックアウトする小説だと紹介し、この作品については**宇宙生命を地球の生命体の延長線上に想定してしまう私たちの思い込みを揺さぶるものです。**(170頁)と評している。

私もクライトン作品にハマって何冊も読んだ。過去ログ 



福岡さんが最終章「地図を捨てる マップヘイターへの転身」で取り上げている本の中にこの2冊が入っている。

ふたりの作品は巻末のリストでは「福岡ハカセの好きな女性」という項目に分類されている。川上弘美のこの連作小説集を一番最後に紹介していることがうれしい。

この章を**形のない記憶。自分の周囲だけにかろうじて紡がれる関係。私たちにの人生には、全体を見渡せる鳥瞰図も、計算された設計図もありません。ジグソーパズルのピースを一つひとつ埋めるように、あるいは一つの細胞が前後左右に向かって少しずつ増殖を繰り返し、いつか生命を形づくっていくように、おそらくは、それが本当の世界なのです。**(213頁)と結んでいる。

**マップラバーは鳥瞰的に世界を知ることを好み、(中略) 世界全体の見取り図を手にしたいのです。**(15頁) 「はじめに」で福岡さんはこのように書き、少年のころはマップラバーだったと告白している。

そう、前述のように、この本は単なる書評集ではない。「マップラバー」から「マップヘイター」へと転身していく過程を読んできた本を通してふり返る半生の記だ。


正月休み中にあと2冊、リストの本を読もう(読めるかな・・・)。

『縄文の思考』小林達雄/ちくま新書
『二重らせん』ジェームス・D・ワトソン 江上不二夫、中村桂子訳/講談社ブルーバックス