透明タペストリー

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「人新生の「資本論」」

2021-05-27 | A 読書日記

 朝のスタバで『人新生の「資本論」』斎藤幸平(集英社新書2020年)を読む。



著者は環境保全のために打ち出される方策に対してことごとく否定的な見解を示す。資本主義が前提の方策は、どうやらダメということのようだ。普段本を読むとき付箋を付けることはするが、傍線を引くことはほとんどしない。だが、この本はなるほど、と思うところに傍線を引きながら読んでいる。傍線を引いたのは例えば次のような箇所だ。穏やかな表現ではないところもあるが引用しておく。

**資本主義による収奪の対象は周辺部の労働力だけでなく、地球環境全体なのだ。(中略)人間を資本蓄積のための道具として扱う資本主義は、自然もまた単なる掠奪(りゃくだつ)の対象とみなす。**(31,2頁)
**経済成長に依存しない経済システム、脱成長が有力な選択肢となるのだ。**(116頁)
**資本主義が地球の表面を徹底的に変えてしまい、人類が生きられない環境になってしまう。それが「人新生」という時代の終着である。**(117,8頁)
**環境危機に立ち向かい、経済成長を抑制する唯一の方法は、私たちの手で資本主義を止めて、脱成長型のポスト資本主義に向けて大転換することなのである。**(119頁)
**MEGA(*1)によって可能になるのが、一般のイメージとはまったく異なる、新しい『資本論』解釈である。悪筆のマルクスが遺した手書きのノートを丹念に読み解くことで、『資本論』に新しい光を当てることができるようになる。それが現代の気候危機に立ち向かうための新しい武器になるのだ。**(149頁)
**世界に目を向けると、近年、マルクスの思想が再び大きな注目を浴びるようになっている。資本主義の矛盾が深まるにつれて、「資本主義以外の選択肢は存在しない」という「常識」にヒビが入り始めているのである。**(140頁)

『資本論』といえばマルクス。マルクス主義が今頃顔を出すのか・・・、と思う。

毎年のように世界各地を襲う自然災害は地球環境に大きなダメージを与え続けてきたことの結果だろう。でも、この先土砂崩落で線路が宙に浮いていると分かっていても、資本主義という列車から降りるなんてことはしないんだろうな・・・。


*1 MEGA:新しい『マルクス・エンゲルス全集』 最終的には100巻を超えることになる全集の刊行が進んでいるとのこと。