320
■『人新生の「資本論」』斎藤幸平(集英社新書2020年)を読み始める。カバーに「2021新書大賞第1位」とあるから、多くの人がこの本を読んでいるのだろう。この本が簡潔で明解な文章で綴られていて展開される論考が論理的で分かりやすいことがその理由として挙げられるのかもしれない。しばらく前の信濃毎日新聞のコラム「斜面」もこの本から引用していた。
書名の人新生(ひとしんせい)は聞きなれない、地質学的なイメージのことばだが「人類の経済活動の痕跡が地球の表面を覆いつくした年代」という意味だという。プラスチックごみが海面を覆い、道路やビル、農地が地表面を覆っている。更に地球を覆っている大気に二酸化炭素が排出され続けている。地球環境を犠牲にしながら経済活動を続けてきたことによりもたらされた結果だ。著者は大量生産、大量消費という経済システムからの脱却、「脱成長コミュニズム」を説く。
かつては数十年に一度と言われたような災害が、世界各地で毎年発生している。日本でも毎年災害(特に水害が多い)が発生し、甚大な被害を被るようになった。今日(21日)もかなりの降雨量に達して河川の氾濫の恐れのある地域が出ている。地球環境の危機的な状況のあらわれ、であることは間違いないだろう。
だが・・・、**資本主義の歴史を振り返れば、国家や大企業が十分な規模の気候変動対策を打ち出す見込みは薄い。解決策の代わりに資本主義が提供してきたのは、収穫と負荷の外部化・転嫁ばかりなのだ。矛盾をどこか遠い所へと転嫁し、問題解決の先送りを繰り返してきたのである。**(42頁)と著者は厳しい指摘をする。
論考をどのように展開しているのか、先が気になる・・・。