■ このところ本が読みたいという欲求、読書欲が強い。なぜだろう・・・。今月(12月)11冊目は、『江戸東京の明治維新』横山百合子(岩波新書2018年)。
明治維新について歴史の教科書的な総論ではなく、具体的に論じている。本書については何も知らなかったが、年に何回か行く想雲堂という松本市内の古書店で偶々目にして、買い求めていた。なかなか好い本と出合ったと思う。
明治維新。身分制解体。旧来の身分制が取り払われた社会に、人びとはどう対応し、どう生きたのか・・・。
本書の著者・横山さんは旧幕臣(第2章)、遊郭の女性(第4章)、屠場で働く人びと(第5章)を取り上げて、詳細に論じている。明治維新という新しい社会システムにうまく適応して生きた人もいれば、飲み込まれてしまった人もいる。
私は第4章の遊郭の明治維新を興味深く読んだ。遊郭を取り上げる理由について横山さんは次のように説明している。少し長くなるが引用する。
**明治維新期の遊郭の変容は、身分制の下での役と特権による社会の仕組みが否定され、新たな社会に転換していくことの大変わかりやすい事例だからである。新吉原遊郭は五つの遊女町で構成されている。五町における遊女屋と遊女の社会的な位置づけの変化は、江戸東京の、とくに町方における維新の意味を象徴的に示しており、近世/近代移行期の都市の変容に迫るうえで格好の素材となる。**(104頁)
第一節 新吉原遊郭と江戸の社会
第二節 遊郭を支える金融と人身売買
第三節 遊女いやだ ― 遊女かくしの闘い
第四節 変容するまなざし
横山さんは第四章 遊郭の明治維新 を上掲したように節立てして論じているが、第三節では、かくしという名前の遊女を取り上げ、かくしが明治維新のうねりの中でもがいた様を詳細に記している。司馬遼太郎のように歴史の総体を俯瞰的に捉えるのではなく、藤沢周平のように市井の人たちの中に入り込んでその暮らしぶりを捉えている、とでも書けば、イメージが伝わるだろうか(こんな喩えでは伝わらないか・・・)。
密度の濃い論考だと思う。
年越し本は安部公房の『方舟さくら丸』と決めている。その前にもう1冊、『戦後総理の放言・失言』吉村克己(文春文庫1988年)を読むことに。スタバ笹部店で朝カフェ読書。
スタバなぎさライフサイト店が閉店してしまったから、これからはここ、笹部店で朝カフェ読書。