■ 12日付信濃毎日新聞に掲載された槇文彦さんの訃報の見出しを見て「あれ?」と思った。槙という漢字が使われていたので。槙文彦 この漢字表記を目にしたのは初めてではないかと思う。例えば槇さんの著書では槇。やはり見慣れた槇文彦 この表記でないと違和感を感じる。
全国紙はどうなっているのだろう。槙か槇か。それから見出しに挙げる代表作は? 気になって確認した。結果は以下の通りで( )内は小見出し。
読売新聞 槇(「ヒルサイドテラス」設計)
朝日新聞 槇(モダニズム建築 洗練)
産経新聞 槇(世界文化賞 幕張メッセ設計)13日に掲載された(他紙は12日)
毎日新聞 槙(建築家、幕張メッセ設計)
日経新聞 槙(建築家 幕張メッセなど設計)
結果は以上の通り。なるほど・・・。小見出しに建築家と入れている毎日、日経は共に槙。
読売、朝日、日経の3紙は評伝も載せている。3紙とも槇さんが国立競技場の当初案に異議を唱えたことにも触れていて、代表作としてヒルサイドテラスを挙げている。
読売新聞
**設計した建築そのままの洗練された都会人だった。**
**いつも理知的、紳士的な話しぶりも、国立競技場の建て替えで当初示された設計案に異議を唱えた時は険しかった。**
「群造形」という考え方にも触れている。
朝日新聞
**槇文彦さんは知的でダンディーな雰囲気を漂わせ、洗練された作品と鋭い論考で戦後建築の良識といえる存在だった。**
**印象的な建築を多数手掛けたが、一つ挙げるとすれば何期にもわたり造られたヒルサイドテラスだろう。**
**どこでも一人で現れ、聞く側の背筋が伸びるように語った。その姿は、スタイリッシュな槇建築と重なっていた。** 読売同様、「群造形」という考え方にも触れている。
日経新聞 **華麗な経歴にクールなたたずまいを兼ね備えた、日本のモダニズムを代表する建築家だった。**
各紙の記事を読み比べると、違いがよく分かって興味深い。
2006.12.14 次のようなことを書いた(過去ログ)。
このブログを始めてまもなく、「顔文一致」というタイトルで書いた(2006.04.23)。その中で、「建築作品はその設計者の体型に似る」という自説を披露しておいた。ドイツの精神病理学者、クレッチマーは体型と気質との間には相関性が見られる、と唱えたがそれに倣って私はそのように考えていたのだが、どうやら「建築作品はその設計者の風貌に似る」と修正した方がよさそうだ。
12日の読売新聞と朝日新聞の槇さんの訃報の記事にこれと同じようなことが書かれていた。上掲記事中、太文字化した箇所。私と同じように考えている記者もいるんだなあ、と記事を読んで思った。他の建築家のことはともかく、槇さんには当てはまると思う。