■ 信濃毎日新聞の12月25日付朝刊に岩手大学人文社会科学部教授・丸山 仁氏の「個性勝負 街の書店の可能性」と題した論考が掲載されていた。丸山教授はネット通販全盛の時代にあって、**リアルな店舗に人を呼び込むためには、「店舗にまで足を運ぶ理由」、「店舗でしか味わえない楽しみ」を提供する工夫が鍵となる。**と指摘し、その仕掛けのひとつとして「御書印プロジェクト」を紹介している。
今年3月に全国の46店舗で始まったプロジェクトは10月22日時点で381店舗にまで広がったとのこと。私が時々行く塩尻市の中島書店もその内の1店舗。御書印は試みとしてはおもしろいと思うけれど、残念なことに有料だ。無料なら集めてみようかなと思わないでもない。いや、集めないか。本を買う書店は数店に限られるし、御書印だけのために書店に行こうとも思わないので。
また、論考には**「書店ゼロの市町村が全国で26%」という報道が目に留まり、愕然とした。**とあり、全国1位の沖縄県に次いで長野県では51.9%の自治体に本屋が無いことが紹介されている。
この数字は12月28日付 の同紙の「時の顔」というコラムにも出ていた。この日は文藝春秋の社長・中部嘉人(なかべよしひと)さんが紹介され、**長野県内で書店がない市町村の割合は52%を占め、沖縄県に次ぐ高い割合だったとの最近の全国調査結果を残念がる。「われわれもいい本を出し続けるので書店さんも頑張ってもらいたい」**
長野県は全国で最も村の数が多く、35ある。次いで沖縄が19(2022年10月1日現在)。人口の少ない村には書店が無いことが多いだろうから、沖縄県や長野県に書店の無い自治体が多いことは当然といえば当然のことだろう。
人口当たりの書店数を比較したらどうなるだろう。人口10万人当たりの書店数をネットで探すことができた。長野県は8.40軒で12位、結構多い。比較の仕方で結果は随分違うものだ。印象も違う。東京都は書店が全国で最も多いが、10万人当たりでは8.28軒で意外なことに長野県より少なく13位だ。
丸山教授は**日々の暮らしの中に本屋がない。そんな社会を私は子供たちに残したくない。**と書いておられる。このような視点で考えるなら、確かに書店の無い自治体が多いということは残念なことだと思う。小さな村にも書店があればいいなぁと思う。
この論考に長野市の「書肆(しょし)朝陽館」が紹介されている。この書店の前身は明治初期から続く老舗とのこと。**店主の情熱と目利き力で真っ向勝負をする姿勢は同じ。(中略)同店にはセンスで勝負の雑貨屋と、居心地のよさそうなカフェを併設している。コーヒーの香りに包まれて、早速買った本を読みふけるもよし、その場で友人と推し本談議で盛り上がるもまたよしである。** 同感。
善光寺に初詣に行くことにして、帰りにこの書店でコーヒーを飲みながら本を読もうかな。 「店舗でしか味わえない楽しみ」ってこのようなことを指すんだろうな。