■ 久しぶりに大学の後輩S君を「白山通りのいえ」に訪ねた。いつの間にか隣にマンションが建っていて『新建築』に掲載されたころとは様子が変わっていた。モダニズム建築は均質化、規格化された材料によって構成されるがS君が手がけている建築は色にばらつきがあり、寸法にも誤差がある材料を許容する(*1)。
*1 S君が昨年フランスから持ち帰った床タイル
「白山通りのいえ」の外壁は左官仕上げだが(メモしなかったので詳しく説明できないが、確か地元の土をモルタルに混ぜて作った材料を使っている)、経年変化でいい表情をしていた。
設計室には版築のいえの模型が置かれていた。
「版築のいえ」は形も構造も独創的。設計を始めてから完成まで8年かかったと聞いた。『住宅特集』に掲載されている写真は美しいシーンを捉えているが、この住宅の魅力は写真に撮ることができない別のところにあるような気がする。
放射状に配置された版築にはモルタルを充填した竹の芯材(?)が等間隔に並べてある。これが構造上有効なのかどうか。版築は強度の実証実験もしたそうだ。
小屋組みの直交しない仕口は加工が難しい。大工さん泣かせの(大いに喜ばせる)構造だ。
彼はルーチンワークのように同じ手法を繰り返すようなことはしない。常にチャレンジする彼の姿勢に拍手したい。