320
『思春期をめぐる冒険 心理療法と村上春樹の世界』岩宮恵子(新潮文庫2007年発行)
■ 2007年に村上春樹の作品を集中的に読んだ(過去ログ)。その時期にぼくは臨床心理士である著者の『思春期をめぐる冒険』も読んだ。村上作品は知人にあげてしまったが(下の写真)、この文庫は残した、というか残っていた。
茂木健一郎氏がこの本の解説を書いているが、その中で村上作品について**村上春樹さんの小説の最大の美質は、通常抽象的と片付けられている観念の世界の事物が、目の前のコップや椅子と同じくらいのリアリティを持っていることを見抜いている点にある。**(312頁)と評している。的確な指摘だと思う。
この『思春期をめぐる冒険』については、カバー裏面に**「フィクションとノンフィクションの交錯する点を掘り下げ、心の深層の知恵を示しつつ、村上春樹作品と心理療法の本質に迫る名著である」**という河合隼雄氏の評が載っている。
村上作品を再読することはないと思うが、この本はいつか再読したいと思う。臨床心理士が読み解く村上春樹の世界、とても興味深い。
『思春期をめぐる冒険』という書名は『羊をめぐる冒険』を意識して付けられた、と見てよいだろう。