■ 『本所おけら長屋 八』畠山健二(PHP文芸文庫2020年第1版第11刷)を読み終えた。例によってこの巻にもひらがな4文字のタイトルの短編が5編収録されている。
**「(前略)お金もなくて、騒動ばかり引き起こす。そんな暮らしはまっぴらだって人は多いだろうけど、あたしは好き。だって楽しそうだもん。世の中のほとんどの人が、お金があれば楽しく暮らせると思ってる。確かに、美味しいものを食べたり、きれいな着物を着たり、お芝居を観たり、遊山に出かけたり・・・。でも、それだけじゃないんだよ。(後略)**「うらしま」(120頁)
お栄さんはおけら長屋の住人たちが通う居酒屋で働いている。そのお栄さんが鼈甲問屋・浦島屋の若旦那にみそめられた・・・。浦島屋の主(あるじ)までがお栄さんに結婚を申し込む。
おけら長屋の松吉も**「お栄ちゃん、真面目に考えてみちゃどうでえ。さすがに大店の主、なかなかの人物だ。家柄より人柄ときやがったよ。頭が下がるじゃねえか。お栄ちゃんなら、うまくやっていけるんじゃねえのか。(後略)」**(126頁)と話す。
だが、お栄さんは断る。
**「(前略)おけら長屋の人たちには、たくさんのことを教えられました。心の豊かさとは何なのか。人らしく生きるとは何なのか。身分も学も金もない。万造さんや松吉さんのことが羨ましく思えるのはなぜでしょう。(後略)」**「ふところ」(148,9頁)
寅さんや釣りバカ日誌のハマちゃんの気ままな(?)暮らしぶりに憧れる。おけら長屋の住人たちの暮らしぶりに魅かれる。
この週末も『本所おけら長屋』を読もう。今度は図書カードを使わなきゃ。