「みんな 今日はこれから大事なことを決めてもらいます」
・・・・・
「いいですか、このことに賛成か反対か決めたいんだけど、男子だけに訊きます」
「え~、女子には賛成か反対か聞いてもらえないんですか?」とA子ちゃん。
「いいじゃないか、先生が言う通りにすれば」とクラス委員のB君。
「では、賛成の男子、手を挙げてください」
あ、みんな手を挙げてるな。本当はぼく反対なんだけどな。でも・・・。C君も手を挙げました。
このことって、2組や3組や他の学年の子たちにも聞かなくていいのかな。A子ちゃんはそう思いました。
この時、A子ちゃんは1年生の時に大好きだった担任のD先生から聞いたことを思い出していたのです。
「民主主義って難しいことばがあるけれど、みんなに分かるように言うとね、
民主主義ってね、みんなのことはね、みんなで相談して、みんなで決めましょうってことなんだよ」
放課後の職員室
手芸クラブの先生と文化祭の作品展の相談をしていたA子ちゃん。
担任のE先生が校長先生に「うちのクラスは全員賛成です」と報告する声が聞こえたのです。
「あれ? 男子にしか聞いていないのに・・・」
その時、A子ちゃんはこうも思ったのです。
「2組と3組の先生は忙しそうにしているけど、どうなんだろう。自分たちのクラスでも賛成か反対か、聞かなくちゃいけないのにな、って思っていないのかな」
A子ちゃんは帰りに一緒になった近所の4年生の男の子に訊いてみました。
「え、ぼくそんなこと全然知らなかったよ。担任の先生も話してくれなかったし」
A子ちゃんはその日の夜、高校生のお姉ちゃんにそのことを話してみました。
「え、何それ、信じられない。ねえ、A子ちゃん 選挙の時、お母さんもおばあちゃんも投票に行くでしょ。だけどね、昔はね、女の人は選挙があっても投票ができなかったんだよ。A子ちゃんのクラスの今日の決め方って、昔の選挙の時と同んなじだよ。戦争が終わった年にね、女の人も選挙で投票ができるようにって、法律で決まったんだよ」
「え、本当なの? 」
「その大事なことって、A子ちゃんのクラスだけじゃなくって、全校の子どもたちに相談して決めないといけないんじゃないのかなぁ」
筆者注:この記事の会話はフィクションであることをお断りします。小学校での子どもたちの生活で、ひとつのクラスで、それも男子だけで決めることも可、などということって何かあるだろうか・・・。私には到底挙げることができなくて、会話に取り入れることはできませんでした。