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朝カフェ読書@スターバックス松本笹部店(2024.12.22)
■『新・紫式部日記』夏山かほる(第11回日経小説大賞受賞作 PHP文芸文庫2023年)を一気読みした。
**(前略)『源氏物語』が人気を博すにつれ、道長が権力を握るための深謀に巻き込まれることになり・・・。虚実の間(あわい)を大胆に描き、絶賛された〝極上の宮廷物語〟。**とカバー裏面の本書紹介文にある。
大河ドラマ「光る君へ」では賢子がまひろ(紫式部)と夫・宣孝との間に生まれた子どもではなく、道長との間に生まれた子どもという設定なっていて驚いた。だが、『新・紫式部日記』の設定はもっと意外なものだった。小姫(紫式部)は死産する。その後、信長に藤式部という召名を授かった小姫は女房として宮中に上がる。
**「扇を忘れて取りに戻ったが、思いがけず朧月夜尚侍のお出ましに遭遇したところだ」道長はそう言って、扇を持った藤式部の指にいきなり自分の手を重ねた。初めて触れたその掌は思いのほか熱かった(太文字化した)。
「お戯れを」
藤式部はさりげなく手を放そうとしたが、道長はより固く握りしめた。**(96頁) 太文字化したことばで道長が『源氏物語』をちゃんと読んでいることが分かる。
その後・・・。
体調を崩して里帰りしていた藤式部に乳母がささやきかける。**「小姫さま、もしや、おめでたではありませぬか」**(101頁)夫の宣孝はとうに亡くなっている。時が経ち、藤式部は無事出産する。生まれた子は当然女児、いや男児だった!。
ぼくはスタバでこの辺りを読んでいたが、思わず声をあげそうになった。生まれたのは女児ではないのか・・・。その後の展開はネタばらしになるので、ここには記さない。虚実の間(あわい)を大胆に描き、と紹介文にあったが、まさかこんなことになっているなんて・・・。
紫式部と清少納言が石山寺で偶然出会い、語らう。具体的には書かないが、この時の紫式部に対する清少納言の冷静な忠告が印象に残った。
この小説のトリッキーな展開をおもしろいと思うかどうか、評価は分かれるだろう。
積読状態解消のために、次は『日本近代随筆選 1 』(岩波文庫)を読もう。