■ 日曜日の昼、松本城の梅を観てからカフェ マトカに立ち寄った。居心地のいい手造りカフェはお客さんでいっぱいで、辛うじてカウンターの端の席につくことができた。
小さな箪笥が書棚代わりに置かれていて本が何冊か並べてある。川上弘美、村上春樹、池澤夏樹、沢木耕太郎・・・。私が読む作家の本もあるが、須賀敦子は未読。『ヴェネツィアの宿』を取り出して表題作を少しだけ読んでみた。衒いのない淡々とした文章に惹かれた。この春は須賀さんの随筆を少し読んでみようと思う。
路上観察 松本城 100314
白漆喰と黒漆の組み合わせ、シックなデザインの松本城
瓦、たるき、突き上げ窓、持ち出し腕木・・・
松本城には繰り返しの美学がいっぱい
繰り返しの美学な梓川橋梁 100313
■ 松本と糸魚川を結ぶJR大糸線、上高地から流れ出る梓川は松本市内で奈良井川と合流して犀川となる。大糸線と梓川の交差地点に架かる梓川橋梁。
地形の変化に富む大糸線には多くの橋梁が架かっているがこれは松本駅を出てから2つ目の橋梁。竣工1967年3月、長さ約290m。
9連の鋼製橋梁を支える鉄筋コンクリート製のT型橋脚と給電用の箱型ラチス柱。必要なもののみで構成されていて、それらの形には恣意性がない。健康美。

■ 10日に行われた長野県の公立高校入試の試験問題が新聞に掲載されていました。「難しい・・・、こんな問題を中学生が解くのか」というのが感想です。数学の問題などは考える気にもなりません。国語の問題を読んでみました。
第一問は『国土学再考』大石久和/毎日新聞社からの出題。なかなか興味深い論考です。早速この本を注文しました。
西洋人の自然観は宗教がベースになっているのでしょう。神様が創造された自然はシンプルな秩序に基づいているはず、という考え方が根底にあると思います。ケプラーが惑星の運動法則を発見できたのもこのような考え方によるものだと『世界の名著 ガリレオ』中央公論社 あたりで読んだように思います。
自然科学の分野で得られた研究成果の多くはこのような「先入観」によるものでしょう。ニュートン然り、アインシュタイン然りでしょう(と根拠もなく書いてしまいます)。彼らは「雪は天からの手紙」(中谷宇吉郎)とは決して考えなかったでしょう(後述)。
西洋の庭園は自然を制御して人工のかぎりを尽くそうとする、と試験問題にはまとめられていますが、その考え方に素直に同意する気にはなれません。前述の「シンプルな秩序に基づく自然」という考え方が西洋の幾何学的に構成された庭園にも反映されているのだと私は思います。そう、シンプルで幾何学的な庭園は西洋人の自然観そのものだと思うのです。
一方、変化に富んだ自然の背後にシンプルなルールが潜んでいるなどとは思いもよらない日本人。
雪の結晶の規則性ではなく多様性を捉えた先の「雪は天からの手紙」ということばは日本人の自然観を端的に示しているでしょう。
日本の庭園にも当然日本人の自然観が投影されています。「自然」のように見せるために日本の庭園からは作庭の緻密な計算が隠されています。
秩序付けられた西洋の都市と混沌とした日本の都市。西洋の小高い丘の上の教会は自然と同様に都市も秩序づけようという意志の表れ。都市の辺縁にひっそりと隠れるように佇む寺は日本人の自然観の反映。このように両者の自然観の違いが都市の構造にまで及んでいると思います。
国語の入試問題を読んでこのような眉唾な説を書いて、今回はオシマイです。


■ 先日注文しておいた本が届きました(左の本)。紙袋から取り出してみてびっくり。こんなブックカバー見たことないです。書名が分かりません。
よく見ると『プロフェッショナルの言葉』という書名だけ文字の色を変えてあるのがわかります。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班/幻冬舎。
2006年1月から2008年3月に同番組に出演したプロフェッショナルの言葉を収載した本です。隙間時間読書向きです。
対照的なのが『真鶴』。こちらは書名を大きくデザインしてあるので、視認性充分です。このデザインは著者、川上弘美のこだわりだったとか。
書名が分かりにくいと反って「あれ、なんだろう?」ということで手に取ることになるのかもしれませんね。
■ 鉄腕アトム
アトムはロボットの究極的な姿ですね。今から50年も前にロボット開発の到達点がビジュアルに提示されたことは驚きです。「アトムを目指せ!」おかげで日本はロボット開発で世界をリードしてきました。手塚治虫の功績大です。
■ 脳内にあるイメージの可視化
何かを開発しようとする時、最終的な姿が可視化されていることは実に有効です。建築ももちろん同様です。建築の設計では曖昧模糊としたイメージが次第に具体的になっていきます。その過程で最終的な姿が完成予想図(パース)として提示されるとその先はパースに向かって設計を進めていくことになります。諸条件を整理してパースに収斂させていくのです。
以前は手描きのパースが主流でしたが、最近はCGパースが増えています。パースの背景となる山並みや空は現地で撮った写真。隣りにある建物も同様です。CGでは外壁の表情やガラスの透明感も実にリアルに表現されます。
屋根の形はきちんと決まっていないので、フリーハンドで何本も繰り返し描いた線、柱の太さも決まっていない・・・。「なんとなくこんな感じ」などと設計者から示される曖昧なイメージをリアルに表現する想像力と創造力がパース作成者には求められます。
パースの下描きを確認して、柱はもっと細くとか、屋根のカーブはもっとなだらかにとか、設計者の修正要求に応えて限られた日数で完成度の高いパースを追求するプロ意識には本当に頭が下がります。
女の恋は上書き保存 男の恋は新規保存
新聞の映画紹介欄(タウン情報「春のお薦め映画」)でこのことばを知り、なるほど、うまいことを言うものだと感心した。男女の恋の違いをパソコンのデータ保存に喩えて表現している。女は古い恋の上に新たな恋を重ねてゆけるが、男は新しい恋をはじめても古い恋を別名保存しておく・・・。
「恋するベーカリー」というアメリカ映画の紹介に使われていた。この映画は現在公開中。久しぶりに映画を観るのもいいかな。でも外は寒そう。こたつで『日本の近現代史をどう見るか』岩波新書を読む方がいいかな・・・。
続きは夕方にでも。
■『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム/ハヤカワ文庫 17年ぶりの再読。惑星ソラリスを覆う海は「知的生命体」。人の脳の思考活動や記憶を読み解き具現化してみせるソラリスの海。ソラリス探査の宇宙ステーションの主人公クリスの前に10年前に死んだ恋人ハリーが出現する・・・。既知の生命体とは全く異なるものとの遭遇と交流。
SF作品に関する過去ログ
■『日本の近現代史をどう見るか』
第1章 幕末期、欧米に対し日本の自立はどのように守られたか
第2章 なぜ明治の国家は天皇を必要としたのか
第6章 なぜ開戦を回避できなかったのか
第8章 なぜ日本は高度成長できたのか
第9章 歴史はどこへ行くのか
高校では日本史を時系列的に古代から教えるが、江戸時代あたりで時間切れとなることが多いのでは。それ以降の近現代史を概観しておこうと思って本書を購入。三島由紀夫の『永すぎた春』新潮文庫 読了後に読もう・・・。
さて本題。
普段スポーツ紙を読むことはまずありませんが、ラーメン屋でたまたま目にしたスポーツ紙に新宿の東京厚生年金会館が今月末で営業を終了するという記事が載っていました。学生時代にこの会館で読売日響の演奏を聴いたことがあります。ストラヴィンスキーの「火の鳥」を聴いたことを今でも覚えています。指揮者は忘れましたが。
このときのブラボー!な演奏に感動してレコードを買い求めて聴いたのですが、会館で聴いた時の演奏とは違いました。今夜、レコードを探してみたのですが見つかりません。
ワインやウイスキーグラス片手にクラシックを聴くより、熱燗とっくり傾けながら演歌を聴く方が好きな田舎の中年も、昔はクラシックを聴いたりもしたのです。
記事によると、東京厚生年金会館は松山千春のコンサートで49年の歴史にピリオドを打つそうです。


■ 諏訪の蔵 撮影20091101
この蔵は昨年11月に諏訪で見かけました。屋根は諏訪地方に見られる鉄平石の菱葺き(一文字葺きの一種)。棟も石を重ねていますが、これは一般的な棟納めです。
漆喰仕上げの腰壁に押縁下見板張りのパネルを取り付けています。漆喰は火に強くても雨にはあまり強くないですから。昨年修復工事が終わり、春に公開された松本市内の高橋家住宅も板張りのパネルを壁に掛けていました。同じ理由でしょう。
この蔵はかなり傷んでいて、妻側の土壁が剥落して、下地板が露出していました。なかなか立派な蔵なのに放置されたままになっているのは残念です。

■ 茅野の民家の屋根 鉄平石一文字葺き 撮影197905
諏訪の隣り茅野出身の藤森照信さんも鉄平石をよく使っています(下の写真)。

■ 鉄平石の屋根と壁(藤森さん家(チ) タンポポ・ハウス)