■ 路上観察 今回は東京谷中のカヤバ珈琲(観察日 不明)
雑誌「新建築」の3月号に上の写真の町屋が取り上げられていた。記事によると、この町屋は1916(大正5)年に建てられたそうで、1階の喫茶店は戦前、1938(昭和13)年の創業。以来長きに亘って営業していたが2006年に閉店したという。それが最近改修工事を終えて再び喫茶店として復活したそうだ。
私は谷中で数回路上観察したが、交差点に建つこの町屋は存在感があった。谷中にはこのようなどっしと存在感のある町屋がまだ残っていて、街並みに懐かしい雰囲気を与えているが、残念ながら次第に取り壊され数が減っているらしい。
出桁構造、寄せ棟の瓦葺屋根。梁や垂木の小口が白く塗装されている。以前も書いたことがあるが、これは本来、水を吸いやすく腐りやすい小口を保護するためのもの。それが外観のアクセントとなり、デザイン上の特徴にもなっている。
小さな喫茶店ではあるが取り壊されることなく、再生されたことはこの地域にとって幸せなことだと思う。街の歴史を記憶に留めるこのような建築の存在は貴重だ。