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映画「ぼくのお日さま」 

2024-09-16 08:44:53 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ぼくのお日さま」を映画館で観てきました。


映画「ぼくのお日さま」フィギュアスケートを題材にした小学6年生の少年の成長物語だ。長編2作目の奥山大史監督作品で第77回カンヌ国際映画祭への出品作品だ。主役の少年少女は無名で観るのは初めて、主演級俳優であるコーチ役の池松壮亮、その恋人役の若葉竜也の2人が脇を固める。春先の雪解けの町の風景も映すが、全般的に雪国の風景をパステル調の映像にして見せてくれる。こんな町で育ったら自分はどうなったんだろう感じながら主人公の姿を追う。

雪が積もる田舎町に暮らす小学6年生のタクヤ(越山敬達)は、すこし吃音がある。アイスホッケーでケガをしたタクヤは、フィギュアスケートの練習をする少女・さくら(中西希亜良)が「月の光」に合わせ氷の上を滑る姿に目を奪われる。さくらはコーチの荒川(池松壮亮)のもと、寡黙に淡々と練習をしていた。荒川は恋人・五十嵐(若葉竜也)の住む雪国の町に越してきたのだ。


荒川はリンクの端でアイスホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て、何度も転ぶタクヤを見つける。荒川はフィギュア用のスケート靴を貸してあげ、タクヤの練習につきあう。 徐々にうまくなったところで、荒川はタクヤとさくらにペアでアイスダンスの練習をしたらどうかと提案する。

思春期の少年少女のスケーティングを観てさわやかな印象をもつ。
フィギュアスケートを題材にしたこの映画に既視感はない。いい発想だ。奥山大史監督はフィギュアスケートを子ども時代にやっていたそうだ。男の子から少年になろうとする頃の主人公タクヤがまだかわいい。中学に入った時のシーンでは学生服がブカブカだ。同じく、少女になろうとするさくらは少しだけお姉さんでフィギュアスケートの練習をする姿が素敵だ。

雪景色と2人の少年少女がマッチした印象深いシーンがいくつもある。2人がアイスダンスをするシーンで目線を10代の感覚に落として観ると、あの時代にこんな楽しいことあればよかったなあとひたすらうらやましくなる。ドラマ仕立てとしては物足りない部分もあるが、映像美は肌に感じる。


⒈雪国の小さな町
雪がかなり降り積もる町だ。教室から校庭を見ると雪景色で、雪の積もった学校の屋上でたたずむシーンを観ていると別世界だ。そんな町にスケートリンクがある。山が見えているのに、海を見渡す坂の町が映ることもある。一緒の町には見えない。陸屋根の家も多く北海道と推測できたが、架空の街にしていいとこ取りをしているのは徐々にわかってくる。ロケハンに成功している映画だ。

映画を観終わって調べると、どうも小樽近郊のいくつかの場所を中心にロケ地にしているようだ。父が幼少期まで小樽だったのでなぜかうれしい。加えて、雪解けした春先の風景での小さな灯台や昔の赤い郵便ポストが印象的だ。


⒉ペアで踊るアイスダンス
主人公タクヤは雪国育ちでアイスホッケーをやっているので、スケートは普通にできる。ただし、フィギュアスケートは初心者である。しかも、フィギュア用の靴でないとクイックなどの技巧はできない。コーチからフィギュア用の靴を借りての基本指導よろしく徐々に熟達していく。

コーチから2人はアイスダンスをやらないかと言われた時、無口なさくらは本当はイヤだったように見える表情をした。でもだまってコーチに従った。2人の腕前には巧拙があったが、徐々に2人のタイミングがあってくる。タクヤも成長していく。

コーチが2人を凍った湖に連れていく。そこでアイスダンスを踊るのだ。池松壮亮が雪道を運転するクルマでかかるのは60年代のポップス「Goin' Out Of My Head」だ。誰しもが一度は聞いたことがあるだろう。それをバックグラウンドミュージックにして少年少女が湖で踊るアイスダンスのシーンは格別にすばらしい「Goin' Out Of My Head」の組み入れ方が絶妙だ。このシーンとスケートリンクでの2人のアイスダンスを観るだけで映画館に行った価値がある。

⒊少女の複雑な想い
さくらを演じる中西希亜良は鼻筋がきれいな美少女である。麻生久美子が12歳だったらこんな顔をしていたのかと思う顔立ちだ。清純でみずみずしい。演技は素人だけどオーディションで選ばれたようだ。さくらはフィギュアスケートの実技は何度も見せるが、セリフは少ない。自分の想いを表情で見せる。


コーチのへのひそかな恋心、仲間である少年へコーチが指導している姿への嫉妬心、ひそかに思いを寄せる先生が男同士でイチャイチャするのを偶然見た時の嫌悪感をいずれもセリフなくわれわれに表情で示す。この年齢の女の子の心理状態は複雑だ。当然演技は素人なのでむずかしいセリフが控えめでうまくまとめられていると思う。

対するタクヤも話し出すとたどたどしくしか話せない。ウブな感じで好印象を与える。コーチが男性同士のカップルだという男色系の匂いは抑えられた。それはよかった。最小限のセリフで魅せてくれた良品の映画である。

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