映画とライフデザイン

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映画「本日公休」

2024-09-21 17:20:53 | 映画(アジア)
映画「本日公休」を映画館で観てきました。


映画「本日公休」は台湾映画。理髪店の女性店主の物語である。台湾のフー・ティエンユー監督が、自身の母親をモデルに書き上げた脚本で、台中にある実家の理髪店で撮影した。予告編で観る時からムードはやさしそうで気になっていた。日本映画はついつい社会の断層や貧困を取りいれないと気がすまない人が多く、ややこしい。貧相になってしまう。台湾映画にはそれがなく独特のムードで心が安らぐ。そんな癒しを求めて映画館に向かう。

台湾の台中で40年間1人で理髪店を営むアールイ(ルー・シャオフェン)は、常連客とのふれあいを生きがいに仕事を続けている。3人子どもがいて、台北でスタイリストをする長女シン(アニー・チェン)、街のヘアサロンで美容師をする次女リン(ファン・ジーヨウ)、定職に就かぬままの長男ナン(シー・ミンシュアイ)がいる。3人とも実家の店には寄らないのに、近くで自動車整備店を営む次女の別れた夫チュアン(フー・モンボー)が孫を連れて散髪に来る。


アールイは決まった周期に来店しない常連客に電話連絡している。ところが、引退して田舎に転居した後も散髪に来ていた歯科医の様子がおかしいようだ。アールイはお店を休み(本日公休)にしてクルマで出張散髪に向かう。

台湾の市中の人情映画、やわらかいムードで心地がいい。
孫もいる初老の理髪店のおばさんが主人公。いきなり下手な運転で愛車のボルボのバンパーをぶつけるシーンでよくいるおばさんだなと感じさせる。お店の客の大半は常連さんだ。くつろいで世間話をしている。自分がいなくなったらみんなどうするんだろうと心配する。

亡くなった妻が髪が白いと判別できないと心配して白髪染めにやって来る老人、親に内緒で前髪をたらしたヘアスタイルにして欲しいと中学生が来たり、軽い人間ドラマをいくつも積み重ねる。理髪店で常連客とのひそかな会話を織り交ぜるのは日台共通で人情劇によくあるパターン。ムードはやさしい。

街の美容院で美容師をしている次女が、「男は習慣の生き物だから(お店の)担当者をなかなか変えない」というセリフを言う。理髪店の娘だというフー・ティエンユー監督が子どもの頃から母親を見ていて実感で思うことなのだ。次女の女性常連客が別の男性美容師に担当を変える時にいみじくも言う言葉だ。女性と男性は違う。思わずなるほどと感じる。

そんな理髪店内で繰り広げられる物語に加えて、ロードムービーの色彩も残す。常連客だった歯科医の連絡が途絶えて心配になって愛用の理容道具を携えて出発するのだ。「本日公休」の札をかけて出発するが、主人公はスマホを家に忘れる。実家に立ち寄った子供たちがどうしたの?と大騒ぎ。途中で出会った農家の長髪の青年を散髪したり、道がわからなくなった時に道路で脱輪したり、いかにも運転が下手なおばさんの珍道中だ。


3人の子供たちの家庭状況にも触れる。現代台湾若者の人間模様だ。定職のない長男は高価な太陽光発電パネルを売り込みに来る。長女の彼氏がらみで不審な交通違反切符が実家に届いたり、離婚した次女と元夫が復縁しそうでしないうちに元夫に恋人ができたりいくつもの逸話を積み上げていく。


ネタバレに近いが、もう意思の疎通ができない歯科医だった顧客の病棟で頭を散髪する姿にはさすがにジーンとする。思いのほか大勢いる観客の年齢層は高く女性率も高かったが、この辺りはすすり泣く声が至るところから聞こえる。いかにも人情映画らしい観客のムードだった。


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