映画「護られなかった者たちへ」を映画館で観てきました。
「護られなかった者たちへ」は予告編で何度も見て気になっていたが、後回しになった作品である。佐藤健と阿部寛の共演でクライムサスペンス風のタッチのようだ。桑田佳祐の主題歌が鳴り響く短い予告編は佐藤健が顔を泥水につけるシーンなど印象的なショットが多い。でも、完全に老けた倍賞美津子の風貌を見るのが忍びない気もしていたのが遅くなった理由である。公開して時間が経つが好評なんだろうか、映画館は割と満席で中年の夫婦連れが目立った。後ろのおばさんが途中から泣きまくっていた。
東日本大震災から9年たった仙台で、周囲に善人と言われる2人の公務員が殺される連続殺人事件が発生。宮城県警の刑事・笘篠(阿部寛)が被害者2人からある共通項を見つけ出し犯人を追う。以前、放火事件で服役し、刑期を終えて出所したばかりの利根泰久(佐藤健)が、容疑者として捜査線上に浮かび追うという話だ。
殺人事件の検挙に向けた動きと並行して、大震災後に家族を亡くして喪失感をもつ人たちを映す。時代は2011年と2020 年を交互に映すが、セリフで内容が理解できるように考えられていて頭は混乱しない。謎解きの要素よりも、生活保護の苦しみにスポットをあてる映画である。でも、途中で様相が変わる。ミステリー的に思わぬ方向に展開する。観ている人間も予想外の進み方に戸惑ったのではないか。
⒈生活保護
生活保護が大きくクローズアップされる映画である。佐藤健と阿部寛とともに重要なキャストが区役所で生活保護の相談をする清原果耶である。娘の給食費すらまともに払えないシングルマザーが生活保護受給者なのにバイトで他に収入を得ているという垂れ込みがあって清原演じる相談員は訪問する。切羽詰まっている。一方で生活保護を受けているのに外車を乗り回すヤクザ風の男に文句をつけにいく。両極端の生活保護受給者を映す。
生活保護を受けないと自活できないような老女の元にも訪問する。生活保護を受けると世間様に申し訳ないという。実は世の中には手続きをしないこういう人も多いらしい。どういう生活保護受給者を取り上げるのかは考えただろうが、いい例をピックアップする。勉強不足で自分は生活保護についてあまり知らない。生活に苦しんでいる人だけでなく、対峙する相談員の辛さもわれわれに訴えている。いい歳なのに普通に給料をもらえて自分は恵まれているなと思ってしまう。
⒉東日本大震災のダメージ
原発を絡めて福島の震災被害をクローズアップした映画が目立ち、宮城県で被害を受けた後の苦しみについて言及した方が少ない。街にリアリティがないと、人物を描いても臨場感が出ない。臨時待機所になった学校のロケなどを見ると、身内を亡くして辛い思いをした人物も浮き上がってくる。宮城県でのロケハンでリアリティに富むセッティングはできている。うまく作られている。
⒊倍賞美津子と清原果耶
先日倍賞美津子の80年代の姿を名画座で観た。イイ女だった。その良き日の姿を見たのもこの映画の予告編で老けた倍賞美津子の顔を見たからだ。まあ歳を重ねてずいぶんと変わったものだ。「糸」でも年老いた姿を見せてくれたが、あの映画も瀬々敬久監督作品だった。連続して起用した。ここでは、震災の避難所で佐藤健と知り合う老婆である。気のいいおばあさんだけど、生活保護を受けないと生きていけないという役柄だ。あの倍賞美津子がこんな姿になってしまったかと思うとなんとも言えない気分になる。
清原果耶は成田凌との共演作「まともじゃないのは君も一緒」で注目した。ませた高校生の役だったが、実にうまい。大物になりそうな予感を感じた。気になっていくつかの映画を観たが、たいしたことはないものが多い。やっぱり作品によるのであろう。ここでは区役所の生活保護の相談員で高校生時代の映像も映す。みようによっては童顔なので、らくらくこなす。これで一皮むけたんじゃなかろうか?
佐藤健と阿部寛のダブル主演はいずれも手堅い。いつもより目つきのキツい佐藤健が役になりきってうまかった。阿部寛のサブ刑事が好かねえやつだと思ってみていたら、大島優子の亭主らしい。驚いた。
⒋瀬々敬久
監督は瀬々敬久で、最近も「明日の食卓」「糸」と高回転で作品を作り出す。自分は「友罪」「64」や「最低」なども含めて監督作品はずっと観ている割にはブログ記事に監督の名前を出していない。ちょっと悪い気がした。
これまでプロフィルに関心を持たなかった。自分と似たような世代だ。もともと京大出のインテリだけど、キャリアは裏街道まっしぐらのようだ。ピンク映画の世界で量産した後に、「ヘヴンズストーリー」「感染列島」でメジャーな世界から声がかかるようになったようだ。現代のサスペンス小説をもとにした題材も多く、連続して人気俳優のそろったメジャー作品で起用されるのも長めのミステリー小説を簡潔にまとめる力に優れていると評価されているのではないか?
ピンク映画は量をつくらなければならない。客も興奮させねばならないので、単なる自己満足に終わらないサービス精神が旺盛になるかもしれない。佐藤健の今までなかったパフォーマンスも観客へのサービスだろう。でも、自分なりの評価は「糸」も「明日の食卓」も5点中3.5〜4点という感じだな。逆に、一番よかったのが「最低」、これは濡れ場もある。本当はこういう方がうまいのかもしれない。
「護られなかった者たちへ」は予告編で何度も見て気になっていたが、後回しになった作品である。佐藤健と阿部寛の共演でクライムサスペンス風のタッチのようだ。桑田佳祐の主題歌が鳴り響く短い予告編は佐藤健が顔を泥水につけるシーンなど印象的なショットが多い。でも、完全に老けた倍賞美津子の風貌を見るのが忍びない気もしていたのが遅くなった理由である。公開して時間が経つが好評なんだろうか、映画館は割と満席で中年の夫婦連れが目立った。後ろのおばさんが途中から泣きまくっていた。
東日本大震災から9年たった仙台で、周囲に善人と言われる2人の公務員が殺される連続殺人事件が発生。宮城県警の刑事・笘篠(阿部寛)が被害者2人からある共通項を見つけ出し犯人を追う。以前、放火事件で服役し、刑期を終えて出所したばかりの利根泰久(佐藤健)が、容疑者として捜査線上に浮かび追うという話だ。
殺人事件の検挙に向けた動きと並行して、大震災後に家族を亡くして喪失感をもつ人たちを映す。時代は2011年と2020 年を交互に映すが、セリフで内容が理解できるように考えられていて頭は混乱しない。謎解きの要素よりも、生活保護の苦しみにスポットをあてる映画である。でも、途中で様相が変わる。ミステリー的に思わぬ方向に展開する。観ている人間も予想外の進み方に戸惑ったのではないか。
⒈生活保護
生活保護が大きくクローズアップされる映画である。佐藤健と阿部寛とともに重要なキャストが区役所で生活保護の相談をする清原果耶である。娘の給食費すらまともに払えないシングルマザーが生活保護受給者なのにバイトで他に収入を得ているという垂れ込みがあって清原演じる相談員は訪問する。切羽詰まっている。一方で生活保護を受けているのに外車を乗り回すヤクザ風の男に文句をつけにいく。両極端の生活保護受給者を映す。
生活保護を受けないと自活できないような老女の元にも訪問する。生活保護を受けると世間様に申し訳ないという。実は世の中には手続きをしないこういう人も多いらしい。どういう生活保護受給者を取り上げるのかは考えただろうが、いい例をピックアップする。勉強不足で自分は生活保護についてあまり知らない。生活に苦しんでいる人だけでなく、対峙する相談員の辛さもわれわれに訴えている。いい歳なのに普通に給料をもらえて自分は恵まれているなと思ってしまう。
⒉東日本大震災のダメージ
原発を絡めて福島の震災被害をクローズアップした映画が目立ち、宮城県で被害を受けた後の苦しみについて言及した方が少ない。街にリアリティがないと、人物を描いても臨場感が出ない。臨時待機所になった学校のロケなどを見ると、身内を亡くして辛い思いをした人物も浮き上がってくる。宮城県でのロケハンでリアリティに富むセッティングはできている。うまく作られている。
⒊倍賞美津子と清原果耶
先日倍賞美津子の80年代の姿を名画座で観た。イイ女だった。その良き日の姿を見たのもこの映画の予告編で老けた倍賞美津子の顔を見たからだ。まあ歳を重ねてずいぶんと変わったものだ。「糸」でも年老いた姿を見せてくれたが、あの映画も瀬々敬久監督作品だった。連続して起用した。ここでは、震災の避難所で佐藤健と知り合う老婆である。気のいいおばあさんだけど、生活保護を受けないと生きていけないという役柄だ。あの倍賞美津子がこんな姿になってしまったかと思うとなんとも言えない気分になる。
清原果耶は成田凌との共演作「まともじゃないのは君も一緒」で注目した。ませた高校生の役だったが、実にうまい。大物になりそうな予感を感じた。気になっていくつかの映画を観たが、たいしたことはないものが多い。やっぱり作品によるのであろう。ここでは区役所の生活保護の相談員で高校生時代の映像も映す。みようによっては童顔なので、らくらくこなす。これで一皮むけたんじゃなかろうか?
佐藤健と阿部寛のダブル主演はいずれも手堅い。いつもより目つきのキツい佐藤健が役になりきってうまかった。阿部寛のサブ刑事が好かねえやつだと思ってみていたら、大島優子の亭主らしい。驚いた。
⒋瀬々敬久
監督は瀬々敬久で、最近も「明日の食卓」「糸」と高回転で作品を作り出す。自分は「友罪」「64」や「最低」なども含めて監督作品はずっと観ている割にはブログ記事に監督の名前を出していない。ちょっと悪い気がした。
これまでプロフィルに関心を持たなかった。自分と似たような世代だ。もともと京大出のインテリだけど、キャリアは裏街道まっしぐらのようだ。ピンク映画の世界で量産した後に、「ヘヴンズストーリー」「感染列島」でメジャーな世界から声がかかるようになったようだ。現代のサスペンス小説をもとにした題材も多く、連続して人気俳優のそろったメジャー作品で起用されるのも長めのミステリー小説を簡潔にまとめる力に優れていると評価されているのではないか?
ピンク映画は量をつくらなければならない。客も興奮させねばならないので、単なる自己満足に終わらないサービス精神が旺盛になるかもしれない。佐藤健の今までなかったパフォーマンスも観客へのサービスだろう。でも、自分なりの評価は「糸」も「明日の食卓」も5点中3.5〜4点という感じだな。逆に、一番よかったのが「最低」、これは濡れ場もある。本当はこういう方がうまいのかもしれない。