@セイリングは何故人間を魅了するか?
風上へ舳先を向けて帆走する。波が船体を斜め前から打つ音が、ピチャピチャ、チャラチャラ、ザワザワ、ザブザブと次第に大きくなる。セイルが風をはらんで、マストが大きく傾く。前甲板に波がザーッと時々上がってくる。太陽の光を反射した無数の風波が一面に輝いている。この瞬間、体中がしびれたような快感に満たされる。人間の体が完全に自然と一体化し、自分が風の中に溶け込んだように陶酔する。聞こえるのは波の音と、風が帆綱をきしませる音だけ。エンジンの音が無い。静かだ。
この陶酔した境地に至るとすべての苦労を忘れる。でもそんな帆走の出来るのは4、5回に一度だけ。その爽快感を得るために冬でも足しげくヨットへ通う。
セイリングをより多く楽しむ為には2つの条件があります。ヨットの係留地が可能な限り近いこと。そして自分だけで単独帆走の出来ることです。他のクルーの忙しい仕事の都合に合わせる必要が無く、自分独りだけの都合でヨットへ行ける。
中古ヨットの買い方には、この2件を優先して買う方法も有ります。
@単独セイリングを楽しむための中古ヨットの買い方:
そうすると、なるべく近い係留所をまず見つける。その後で単独帆走が出来るような中古クルーザーを選びます。単独帆走には艇長26フィート位が最適で、自動操舵装置の有る艇にします。それからジブ・ファーラーも必要です、メイン・セイルの上下を独りでするためにレイズイ・ジャックも必要です。
小生は10年前にアメリカのジョイラックという26フィートの中古を100万円で買いました。前の持ち主は若者数人でレース出場を楽しんでたので単独帆走に必要な装備は自動操舵装置以外なにもついてませんでした。ケブラー製のレース用セイルを何枚も持っていましたが。そこで、購入後、ジブファーラー(25万円)とレイズイ・ジャック(6万円)は新品を買い装着して貰いました。
中古クルーザーを買うときこのような余分な費用が必要なら、購入予算の中に計上しておきます。
もう一つ重要なことは船外機にするかインボードエンジンにするかの問題です。
前回の「中古ヨットの買い方(13)」では現役のかたは仕事が忙しいのでトラブルの少ない船外機のタイプが良いとお薦めしました。
引退後に購入されるなら是非、インボードエンジンのタイプが良いと思います。
前回まで記しましたように色々なトラブルが起きますが時間をかけて修理するのも引退後の楽しみになると思います。それに何よりも出入航や帆の上下の度に重いエンジンを上げ下ろしする必要がなく、体力が弱くなる年齢には非常に助けになります。
それともっと重要なことは、セイリング中に波や風に対する船体の揺れ方が重厚で、自然の力の奥深さが体で実感でき、セイリングの陶酔感が一層味わい深いものになることです。小型のディンギーヨットでは味わえない陶酔感です。
さて「中古ヨットの買い方(12)」ではクルーザーヨットの使い方を3つに分類しました。1、昼間だけ出港し、風でヨットを悠然とセイリングすることを楽しむ。夜はキャビンでパーティをして楽しむ。2、近海で昼間だけのレースへ出場をし、レースで優勝することを楽しみにする。3、外洋での何日間もの長距離航海を楽しむ。
この3種の組み合わせもあります。しかし、1の昼間のセイリングとキャビンでの飲み会を楽しむ人々が圧倒的に多いようです。次回はキャビンでのパーティーについてその企画内容と備品について書く予定です。
フォトアルバム「中古ヨットの見分け方の写真集」ではジブファーラーとメインマスト・トップからブーム端に張ったレイズイ・ジャックの写真も示してありなます。(続く)