顔には口髭に、耳ピアスの出で立ち、町で見受けられる、そこいらのあんちゃん姿に
この成り下がりの姿は日本男児として許せないと、何となく違和感を持つのは、我々の育った時代感覚のづれなのであろうか
そんなあんちゃんも家屋の塗装作業を任せられた職人の一人としてやってきた。
上は作業着に、緩やかな鳶のズボン
地下足袋を履いて、頭にタオルを巻き、その上に、被ると言うより、
何とか乗っかるヘルメット姿がいなせな現場姿である。
戦場は何時もパイプで組まれた足場か、傾斜のある屋根など
滑り易い高所の危険な第一線である。
もとより軽い身のこなしで、高所を忍者の如く、自由に動き回る。
手すりのある所は未だしも、屋根上は完全無防備、四つんばいになって、はいつく張るのでは仕事にならず、失格である。
どんな場所でも、すくっと立つ自立出来る、バランス感覚が総てである。
素手でも危なっかしいのに、重い塗料の缶とそれを塗る刷毛けを持ち、両手が塞がっても、自由に動き回れるのは曲芸師そのものである。
高所恐怖症や運動神経の鈍い人間にはとても勤まらない職業である。
我が家の作業は無事終えて、隣接する家々も、夜討ち朝駆けの営業マンに乗せられ、次々と落とされ、仕事が始まった。
ある日、家壁の補修をしていたら
「こんにちは~」と声掛けられ見覚えのある姿はあのあんちゃんであった。
明けても暮れても、危険、汚い、きついの典型的な、3Kの仕事に意気を感じ頑張っている。
そんな姿に、冒頭の印象で総てを被らせて、見てはいけないことを改めて思い知らされた
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