殆どの人がすみれを見て心を和ませ、春だという気持ちになる。
けれど、この植物ゆかしいだけではない。なかなかの代物なのだ。まず、やたらと種が多い。日本には100種以上としている本もある。江戸時代まではスミレといえばスミレと言う感じで、ほとんど分類される事はなかったが、今では少しでも花の色や葉や茎の毛の量が違えば、それを変種や品種として区別し学名を与える傾向にある。「これなにすみれ?」の質問に即答できる事はほとんど無い。
シハイスミレ(紫背菫)とマキノスミレ(牧野菫)を例にとる。前者が西日本、後者が東日本に分布するが、ここ中部地方には混在する。どちらも葉の裏側が紫色を帯び花の色は淡紅紫色から濃紅紫色である。肉眼で判る違いは葉の広げ方がシハイスミレは斜め上向き、マキノスミレは垂直に近いということだけ。だから、その二種が並んでいない限り見分けるのは大変難しい。
次にスミレが凄いのは、繁殖の仕方である。花は後ろが突き出したような形になっている。この部分は「距」と呼ばれ蜜の入れ物である。この長い筒状の容器の蜜を飲むことの出来るハナバチの仲間のみが花粉の媒介者である。ハナバチは春のみ活動する。花が終わりハナバチが来なくなり人々も見向きもしなくなる夏から秋の間スミレは実を結び続ける。つぼみのままで花を咲かせない「閉鎖花」を作る。この閉鎖花の中で自家受粉し種子を多産する。種子には「エライオーム」というゼリー状の物質が付着していてこれが蟻の大好物なのだ。蟻はエライオームを餌にするためせっせと巣に運び込み、食べ終わると蟻にとってゴミ同然の種子を巣の外に運び出し捨てる。
野の花のイメージの強いスミレがコンクリートの割れ目にそっと生えて花を咲かせるのは蟻に種子を播いてもらっているからである。
「何やらゆかし」と感じさせるスミレは巧妙に子孫を増やすたくましい存在なのだ。
草女
けれど、この植物ゆかしいだけではない。なかなかの代物なのだ。まず、やたらと種が多い。日本には100種以上としている本もある。江戸時代まではスミレといえばスミレと言う感じで、ほとんど分類される事はなかったが、今では少しでも花の色や葉や茎の毛の量が違えば、それを変種や品種として区別し学名を与える傾向にある。「これなにすみれ?」の質問に即答できる事はほとんど無い。
シハイスミレ(紫背菫)とマキノスミレ(牧野菫)を例にとる。前者が西日本、後者が東日本に分布するが、ここ中部地方には混在する。どちらも葉の裏側が紫色を帯び花の色は淡紅紫色から濃紅紫色である。肉眼で判る違いは葉の広げ方がシハイスミレは斜め上向き、マキノスミレは垂直に近いということだけ。だから、その二種が並んでいない限り見分けるのは大変難しい。
次にスミレが凄いのは、繁殖の仕方である。花は後ろが突き出したような形になっている。この部分は「距」と呼ばれ蜜の入れ物である。この長い筒状の容器の蜜を飲むことの出来るハナバチの仲間のみが花粉の媒介者である。ハナバチは春のみ活動する。花が終わりハナバチが来なくなり人々も見向きもしなくなる夏から秋の間スミレは実を結び続ける。つぼみのままで花を咲かせない「閉鎖花」を作る。この閉鎖花の中で自家受粉し種子を多産する。種子には「エライオーム」というゼリー状の物質が付着していてこれが蟻の大好物なのだ。蟻はエライオームを餌にするためせっせと巣に運び込み、食べ終わると蟻にとってゴミ同然の種子を巣の外に運び出し捨てる。
野の花のイメージの強いスミレがコンクリートの割れ目にそっと生えて花を咲かせるのは蟻に種子を播いてもらっているからである。
「何やらゆかし」と感じさせるスミレは巧妙に子孫を増やすたくましい存在なのだ。
草女