白神に惹かれて秋田に行った。
宿の夕食に、秋田民謡にある「ハタハタ」が出された。
しっかりブリコの詰まった塩焼きの一品である。
宿の人からハタハタについてのご説明があった。
「秋田名物八森ハタハタ、男鹿で男鹿ブリコ」と秋田音頭にも謡われたハタハタは、江戸時代以前から秋田の食卓になじみの深い魚である。冬の雷が鳴る頃にハタハタが沿岸に集まるので、別名「カミナリウオ」とも呼ばれ、鰰とも雷魚とも書いている。
海が荒れる危険な時期にもかかわらず、ハタハタ漁は、慶長年間の文献にもその名が登場し、献上品としても200年間にわたって秋田の特産品を代表してきた。かつては、豊漁が毎年続き、捕れ過ぎで価格が暴落、「箱代にもならない」と言われるほど大漁貧乏が続いた時期もあった。
だが、長い歴史を誇るハタハタ漁だが、開発による海洋環境の変化と乱獲などがたたって激減、大衆魚から高級魚になってしまった。平成4年、3年間の自主禁漁に踏み切り、禁漁期間中は、稚魚の放流が行われた。「育てる漁業」の実践である。
解禁後も漁獲量の割り当て配分が行われ、確実にその数を増やしている。過去の大漁は、もはや昔話だが、ハタハタの大群が怒涛のように押し寄せる日を漁民はもちろん、県民も心から夢見ている。今は中々の貴重品です。ではお召し上がりください。
私は魚卵が好きなので早速口にしたが驚いた。プチプチ・ぬるぬるではないか。
思わず箸がとまってしまった。私には合わなかったのである。そのせいか句作にも失敗してしまった。せめてハタハタの名句を。
鰰のみひらきし目にまた雪来 山上樹実雄
鰰の腹裂くるとも卵抱く 殿村菟糸子
雷魚の青き目玉が火に落ちし 土谷青斗